TREK CHINA C.E.Oフィリップ・マグレイドさんに聞く中国サイクリング事情の今

前TREK JAPANの社長で、現在はTREKグローバルのアジアパシフィック統括職にあるフィリップ・マグレイドさんにお隣、中国のサイクリングの今を聞いた。

ー そもそもTREK CHINAは何時頃設立されたのでしょうか?
2005年の秋頃なので、今年で7年目に入ります。私がTREK CHINAに着任したのは2009年の秋なので現在で丁度2年になるでしょうか。中国のサイクリング人口というのは、この7年間、劇的に増えています。マーケットとしてはとてもエキサイティングな程に。

ー 中国では、今、どんなサイクリングの仕方が流行っていますか?
世界的な流れでもありますが、健康志向が中国でもとても高まっています。なので、自転車通勤はこの1年でもの凄くポピュラーになりました。ほんの数年前は大都市圏でスポーツバイクを見る事は稀でしたが今では沢山走っています。多いのは、クロスバイク、それからMTBですね。特にアルミフレームのハードテイルに、所謂スリックタイヤではなくて、若干のノブの付いたセミスリックタイヤを履いて街乗りをする。と言うのが北京、上海、重慶などの大都市圏での主なサイクリングのスタイルです。平日は、地下鉄での通勤を避けて自転車通勤を行い、休日はちょっと2,30km程グループで遠出して、郊外のオシャレなカフェでお茶をすると言うのが定番。10年前には全く存在しなかったと言っても良いフィットネスとしての自転車。というのが、都会っ子達の間で爆発的に増えています。日本と中国の両方のサイクリング事情を見て一番違うなと思うのは、中国では女性のサイクリストが非常に多い。10人居たら2人は女性。と言うぐらいに女性のユーザーが多いですね。

ー ロードレースやトレイルライディングと言うのは存在するのでしょうか?
中国では、日本よりもレース事情が実は進んでいて公道を封鎖してのロードレースというのがココ数年で盛んに行われるようになってきました。この時に使用しているバイクは、勿論クロスバイクやMTBではなくてドロップハンドルのロードバイクです。日本よりも警察がロードレースの開催に協力的。という理由があって、公道を使ったロードレースが爆発的に増えている。サイクリング文化の発展と言う意味ではとても良い事だと思っています。また、レースの運営自体はボランティアが行っていて、オーガナイザーも人数が多く集まらないと翌年の開催を市や警察が認めてくれないという理由もあって、エントリーフィーをとても安く設定しています。具体的な金額はちょっと忘れてしまいましたが、忘れてしまうぐらい安い。本当にポケットマネーで出れる感じですね。レースは3000人、5000人の参加者規模のレースが結構開催されていて、非常に盛んになって来ています。参加者も皆モチベーションが高い。こういったレースの参加者層は、日本の富士ヒルクライムととても似ていて非常に幅広いですね。もの凄く真剣に乗っている人から、レースは初めてと言う人まで幅広く居ますが、サイクリングのエントリー人口が多いので、レースは初めて。と言う人が多いのも印象的です。
一方でトレイルライディングについては、北京に限って言えばシングルトラックのトレイルが余り多くないので、今からスタート。という感じです。勿論それでもトレイルをみつけて走っているマウンテンバイカーは居ますが。一方で、トレイルを作ろう。という動きは結構あります。北京では昨年IMBAのメンバーを2ヶ月間アメリカから呼んで、地元の市に協力を求めて山にトレイルを作り始めました。実際にトレイルを作ったし、トレイルの作り方を中国に伝導してもらった。そんな動きもあって、これからトレイルライディングは盛んになって行きそうな予感がしています。北京の郊外にはトレイルを作れば楽しそうな山が沢山あります。10年後には、世界最大のMTB大国になっているかもしれません。

ー 実際、ユーザーはどんなブランド、どんな値段帯のバイクを買っているのでしょう?
TREKブランドは、中国のマーケットでビッグブランドとしてのポジションを商品力もあって築けています。また、他のブランドだと、GIANT、MERIDAの健闘が目立ちますが、イタリアなどヨーロッパのブランドは活躍出来ていません。冒頭にも述べたようにアルミフレームのハードテイルMTBや、クロスバイクが大きなシェアを占めていますが、一方で、例えばMadone6のようなフラッグシップバイクもかなり売れています。少し自動車に詳しい人なら、中国のマーケットでAUDI、BMW、PORSCHEなどの高級ブランド、その中でも高級グレードに当たる車種ががかなり売れている事をご存知だと思いますが、そう言ったユーザー層が居るし、シリアスなレーサーも多い為、Madone 6のようなハイエンドバイクが売り上げを延ばしています。あと、中国で本物の自転車を買おうとするユーザーはショップに求めるサービスも高いものを要求するため、コンセプトストアで購入されるお客さんが非常に多いのも中国マーケットの特徴でしょうか。
ちなみに所謂ママチャリでないスポーツ用自転車のマーケット自体は、正確な数字は持ち合わせていないのですが、金額ベースでは日本のマーケットの方が恐らくまだ大きいと思います。中国のサイクリング文化は始まったばかりで、ユーザーや文化としての成長を見ていてとても面白い。と言うのは北京に住んでいて思う実感ですね。


フィリップ・マグレイドさん
TREKアジアパシフィック統括 兼 TREK CHINA C.E.O
 
 

report: Kenji Nanba
photo: The Bike Journal
date:2011.9.15