高雄自転車天国理論

正直言って関東の冬は寒い。都内は寒いが、それ以上に23区在住者にとって自走で冬サイクリングorトレーニングを行おうとすると避けては通れない河川敷のサイクリングロードは、川沿い故に気温は低く風も吹くので更に寒い。挙げ句の果てに、早朝のサイクリストオアシスであった大井埠頭は例の一件で走りにくくなってしまった。と言う事で、正月旅行の行き先と合わせて提案したいアジアのサイクリング都市が台湾の高雄だ。

台湾、それは言わずと知れた世界最大の自転車製造国である。70年代後半の経済開放以来、伸び続ける台湾経済の屋台骨を支える産業の一つが自転車産業で、実際に再大手のGIANT manufacturingは全産業を合わせても台湾で10位以内の売上高を誇る会社であるし、2位のMERIDA industryは10位台中盤、売上高で5000億円(2010年期)に達する。が、10年近く前に初めて台湾を訪れた時に驚いたのが自転車メーカーのエンジニアのこの一言。「Cycling? What?」台湾の人は自転車は作るがサイクリングはあまりしなかったのだ。よくよく考えると日本も世界の自転車製造の中心であった時代があるが当時は一部の愛好者のみのスポーツであったので人の事は言えないのかもしれない。無茶苦茶な交通マナーと光化学スモッグをみると同行していたアメリカ人ジャーナリスト氏も「これでは自転車には乗れないよね。」と言っていたのを覚えている。

が、その台湾で今、サイクリングが大流行中だ。キッカケは4年前に台湾の映画界で興行成績1位になった台湾制作の映画「練習曲」。耳の聞こえない青年が自転車に乗って台湾を一周しながら人々と触れ合うという映画で、映画のキャッチコピーは「今やらなくて、いつ出来る」。この映画に感動して、ランドナーを買って台湾一周の旅に出る市民が続出した事で、台湾でサイクリングが急速に、爆発的に普及した。ちなみに「練習曲」は伝説の台湾映画「非情城市」のカメラマン、チェン・ホァイェンの初監督作品だ。

元々、これだけ大きな産業を持っているので政治の世界にも自転車界出身の政治家を多数輩出しておりサイクリングロードは整備されているし、交通マナーは10年前はカオスそのものだったが急速な発展と共に今ではスクーター(台湾の自動車ドライバーからは危険なので嫌われている)にさえ気をつければローカルルールですね済むぐらいの運転なのでサイクリングのための下地は出来上がっていた所に、映画のヒットで火がついたという事だ。

その「練習曲」で主人公が旅に出るスタート地点が高雄であるが、日本人にはあまりメジャーな観光地とは言えない高雄は実は隠されたアジア最高のサイクリング都市の一つであった。

Part.2に続く
 
 

高雄自転車天国理論の目次

Part.1 高雄自転車天国理論
Part.2 この冬、サイクリストは高雄を目指す
Part.3 台湾のサイクリング事情
Part.4 アジア初のバイカーズホテル、YoHo Bike Hotelを知っているか?
Part.5 高雄サイクリングの計画の立て方(近日公開予定)

report: Kenji Nanba
photo:Kenji Nanba, The Bike Journal
date:2011.12.08