TRP Parabox Discbrake

どんな製品?
市販品初のシクロクロス専用油圧ディスクブレーキシステム。ヘッド部分に装着するマスターシリンダーユニットにワイヤーケーブルを装着してマスターシリンダーを圧縮する事で油圧を発生させるセミ油圧システム。前後ローター径は160mm。


ジャーナリスト視点でのインプレッション
アイデアは面白いし、始まったばかりのシクロクロス用ディスクブレーキで既にいきなり油圧というガジェット好きの心を満足させてくれる一品ではある。が、「Paraboxはオススメですか?」と聞かれると残念ながら誰にでも太鼓判を押せる製品とは言いがたい。何故か?理由は一つではなくて、いくつかある。
まずメンテナンス性がもの凄く悪い。普通に装着しているのに、ステムとマスターシリンダーユニットが接触したり、マスターシリンダーレバーがオーバーサイズのヘッドチューブに接触したり、ケーブルの取り回しがもの凄く悪かったり、オフィシャル説明書とオフィシャルYoutubeのインストレーションガイドで装着の仕方が違っていたりと普通に並のメカニックが初めて取り付けようとすると上手く行って数時間は掛かる複雑怪奇な仕様な上にエア抜きがしにくい。そもそもブレーキワイヤーによってハンドルが固定された状態から動かせないのに、ステムを外さないとリザーブタンクにアクセス出来ないという構造(写真上)自体からして整備性の事はどうやら設計時には考えなかったらしい。
次に製品としての精度、特にネジ関係のクオリティがお世辞にも高いとは言えない。調整のためにネジを開けようとしたところ、普通にネジを舐めてしまうぐらいの精度。よってローターのセンタリングもし難ければ、ブレーキストロークの調整もし難い。
最後にブレーキとしては致命的な信頼性にも欠けている。初期ロットならではのトラブルと信じたいが、このParaboxはマスターシリンダーの片側が走る前からオイル漏れを起こして走行不能となってしまった。ちなみにディスクブレーキに慣れていないユーザーはオイル漏れと聞くと冷や汗をかくかもしれないが初期ロットのブレーキでは結構あるトラブルでトップブランドでも稀に出たりする。少なくとも私の経験上では数度ある。一度も抜けた事が無いのはシマノとヘイズ。
これらの問題はキチンとした腕と保証体制を持ったプロショップなら全く問題ない話であるがDIYの人には大問題だ。このブレーキに関しては悪い事は言わないのでDIYは絶対に行わない方が良い。素直にディスクブレーキの得意なプロショップに駆け込むべきだ。そもそもTRPの補修部品を市場で手に入れる事自体が困難である。よって誰にでも太鼓判は押せない製品となる。
とはいえ、別の個体の経験ではバシッとインストールされたParaboxの性能には不満は無い。制動力は油圧ディスクブレーキに期待されるものだし、コントロール性、レバータッチも申し分ない。導入部分のワイヤー部にGOREケーブルを使えば、MTB用の最高級ディスクブレーキの如きブレーキタッチがロードバイク用ブレーキレバーで堪能出来る事は確認した。少なくとも現存のシクロクロスバイク用ブレーキとしては最高のブレーキ性能を発揮してくれるのは間違いないであろう。問題はシクロクロスにそこまでのブレーキ性能が必要なのか?という事になってしまうがガジェット好きにはそんな事は関係ない。むしろ実用上のシクロクロスレースでの最大の問題はステムの下に200g強の重量物が入ってくる事と強制的にステム高が1.5cm程度高くなるポジション出しの難しさであろう。
 
 

report:Kenji Nanba
photo:Kenji Nanba
date:2012.01.22