日本のトレイルで650Bを先行フルテスト!

まず、この650B(27.5)というホイールサイズに関して想像で「26インチと29インチの中間みたいな感じでしょ?」と言うのは止めてもらいたい。しばらくの間、いつも走る関東のトレイルで650Bを乗って見えてきた事は、そんな簡単に「こっち、あっち」と答えが出るようなものではなかったのだ。
29erが出始めたころのバイクは、とにかくネガティブな印象が強く出過ぎていて、やはりキワモノ的な扱いだった。それから5~7年程で26インチに取って代わる程の「スタンダード」と呼べる位置まで29erが普及した。そこまでの過程で、29er生みの親であるゲイリー・フィッシャーを初めとして、各社が本当に多くの試行錯誤を経て今の29erがある。

2012年、レースシーンを発端として650Bが旋風を巻き起こした。29erがレースでのスタンダードになりつつある中で、650Bがワールドカップで幾度も優勝するという「事件」が起きたのだった。ワールドカップの中盤戦までは650Bと26インチが勝利を収め、29erは勝てなかったという「事件」。29er万能説がガラガラと音を立てて崩れ、いきなり現れた650Bに世界中が注目した。

「29erは背の低いライダーではポジションが出ない」
「いや、女性や背の低いライダーでもちゃんと成績残しているよ」
幾度となく繰り返されているこの言葉達。29erを押しているメーカーではプロライダーにも強制的に29erを乗らせ、好き嫌いは言わせてもらえない、プロなのでこんな事は当たり前だ。このマーケティング戦略が功を奏し29erが日本でも良く売れている。そこに現れた650B、29er万歳と声を大にして叫び続けてきたメーカーのスルー具合は本当に「MTBを愛しているのか?」と言いたくなってしまうほどだ。

しかし、4月に行われた世界一の自転車の祭典シーオッタークラシックで目にした650Bの加速度合は、29erの時のそれとは比較にならない程に各社が歩調を合わせるかの如く、まさに爆走している。
29erの時は、29erが誕生して数年経とうというのに有名バイク&パーツメーカーの中でも、「売れるだろうからとりあえず作っておく」メーカーと「まだメリットが見えてこないから今は作らない」というメーカーがあったが、650Bは2013シーズンに向けてかなりの数のメーカーが650B専用品を発表している。MTBで一番速く走るために必要なホイールサイズってのを各メーカーの有識者がすでに認めているということに他ならない。

こんな書き方をすると、私は29erが嫌いだと思われそうだが、そんな事は無い。
自分にとっての最重要レースであるエクステラ全日本選手権、そして世界選手権では29erで参戦した。共に2013年モデル。もちろんすでに650Bが入荷しているメーカーもあったし、それらのレースで650Bに乗れる算段もついていたが29erを選んだ。嫌いだったら乗るわけがない。条件が揃えば29erは明らかに速い。
ただ、何でもかんでも29erを勧めるこの現状に「ちょっと待てよ」と言いたいだけなのである。

前置きが長くなってしまったが、650Bのインプレッションに移ろう。
今回のバイクは「BOTTECCHIA ZONCOLAN 27.5」(ボテッキア ゾンコラン27.5)。
ここで面白い事に気が付いた、ボテッキアの本国WEBサイトを見ると、ゾンコラン27.5にはフルXTRモデルがあるものの、ゾンコラン29にはXTまでのモデルしか展開が無い。この事が意味するものを考えると面白くなってくる。

まず、ゼロスタートの加速。1踏み目から5回転目まではどちらかというと26インチに近い。29er特有の1テンポの遅れが僅かしか感じられない。加速の部分でのモタ付きがあるとしたなら、29erと同じくホイールとタイヤに依存する面が大きいように感じた。
今回のバイクに付いていたホイールはSLXのハブで組まれた物だったが、それでも29erで10万円に近いホイールと同等レベルの加速感があった。良く出来た完組ホイールを装着していたなら、ほぼ26インチと変わらない加速の軽さをみせると思われる。

オフロードでの巡航では29erに近いものがあった。ホイール径が大きい事によるメリットがかなり大きく現れており、
凹凸による引っ掛かりが26インチの100㎜フルサス以上に少ない。ただ、凹凸が大きくなるとやはり29erのそれと比べてしまうと明らかに劣る。
握り拳大の石が連続する場面では29erに水をあけられるが、一般的な砂利の林道では大差は感じないほどだ。王滝のガレている路面では29erの方がフラット感が強く出るだろうか。

登りではクランクの長さ、ギヤ比ともに26インチと同じと考えて良い。なので悩む必要は無い。
斜度の緩い登りでのペダルの落ちて行く軽さはほぼ26インチ。サクサクとペダリングできるので、前のライダーが詰まってほぼゼロスタートになっても漕ぎ出しは軽い。斜度がきつく、フロント3枚ギアのインナーを使うような登りではやはり外周部の重さが出てしまうので29erよりになってしまう。
ペダルの落ち方も同じように重さが出てくるので、日本のトレイルでのライディングを考えるとフロント3枚ギアが当てはまるだろう。ホイール径の大きさによる乗り越え性能を考慮しても、激坂登りは26インチに分があるが、斜度が緩くてもガレていたなら650Bは29erに近い安定感がある。

下りではどちらかというと26インチに近い。良い意味で言うと、コントロールをしっかりできる。悪い意味で言うと安定感は29erに分がある。良い意味であるコントロールというのは、自身の技量に合った操作をすれば、バイクにしっかりと反映される。路面からのインフォメーションがしっかり残っているし、ハンドリングも、ハンドルの細かな切り方に機敏に反応してタイヤにダイレクトに伝わる感触が26インチに近い。「操っている」感じがちゃんと残っている。
悪い意味での安定感というのは、29erならば路面がかなり荒れていようと、ブレーキをかけずに突っ込んで行っても何事も無かったようにバイクが荒れた個所を通過して行く場合が結構あるが、650Bでは路面の荒れがしっかりとバイクを揺らし身体に衝撃が伝わってくる。
この2点を考えると、アメ車的な大味でゆったりした走りが好きならば29er、自身で積極的にバイクを操作し、コントロールしたいのならば650Bだと言える。

S字のコーナーの連続では、比べるまでもなく・・いや、26インチにも29erにも完全に圧倒して650Bが速く楽だ。
タイヤのグリップの強さと、ハンドリングの操作性がかなり高次元でバランスされていて、29erのグリップと26インチのハンドリングの良い所取り。やっとここで最初に書いた「26インチと29erの中間みたいな感じでしょ?」の良い所だけを取り出した中間という事に当てはまった。
もちろん、コーナリングはライダーのスキルに依存する割合が大きいが、上手くなればなるほど、ほんの僅かな些細な違いが気になってしまう。プロレベルになればそんな違いをスキルでカバー出来てしまうが、気持ち良いか、悪いか、納得いくか、いかないかは別問題である。
「ココ!」っていう針の穴に糸を通すかの1点のラインを狙って行くのに650Bがもっとも成功率が高く、そして速かった。

主に、加速、巡航、登り、下り、コーナーの5ポイントで比べてみた。
26インチと29インチではかなり走りの特性の違いが大きいが、650Bではその両方の特性を行ったり来たりととても面白いものだった。最後に、この3種類のホイールサイズの中で購入を悩んでいるとしたならば、私がお勧めするサイズを下記に記す。

・初心者でレースは頭になく、トレイルライドが中心・・29er 安全第一で考えると29インチが安定感がある。
・初心者で今後レースを真剣にやって行きたい・・・・・26インチ or 650B バイクをコントロールする基本を学ぶため。
・MTB歴があり、トレイルライドが中心・・・・・・・26インチ or 29er コントロールを楽しみたいか、楽に長くを楽しみたいか。
・トレイルを中心に、レースも走っている・・・・・・・650B or 29er 自身の走りのスタイルに合わせて楽しく速い方を選ぶと良い。
・Jシリーズではなく、一般のレースがメイン・・・・・26インチ or 650B 一般レースは時間も短く、ダッシュを多用するから加速の良いバイクを。
・Jシリーズを死ぬ気で走るライダー・・・・・・・・・好きなサイズに乗ればいい 同じ条件でタイム計測して速いサイズを選べば良い。

確かに650Bとはどういう特性があってどういうものか、と、簡単に上手に表現が出来ないかもしれない。どのライダーに勧められるのかという事も含め、頭を悩ませるホイールサイズであろう。
しかし、ハッキリと言えるのは、バイクにポジションを合わせるのではないって事。ポジションがしっかりと出せるバイクを選ぶ事が第一に必要だ。いずれ650Bが三者択一になるだろう。しかしMTBという乗り物が辿って来た道は、常にトライ&エラーの繰り返しだった。
近い将来、650Bが更に変貌を遂げ、完全に二者を上回る時が来るのかもしれない。
実に楽しみな時代がやって来た。
 
 

report:小笠原崇裕(Takahiro Ogasawara)
photo:The Bike Journal,石渡やすし(Yasushi Ishiwatari)
date:12.10.30