3大ブランド旗艦ロードバイク徹底比較 Vol.7

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小笠原ー 最初は、ポジション出しとかネジの締まり具合とかチェックするために3台をとっかえひっかえクルクルっと乗ってみたんですよ。その時の印象はトレックがダントツで悪かった。

難波ー なぜ?

小笠原ー ネジの締まりとか見てるんで、腰上げて振ったりしながら走るでしょ、それで感じたのが、やたらめったらゴツゴツするなと。よく解らないけど、ずーっと跳ねてるし。という感じ。

難波ー トレックと言えば、伝統的に乗り心地が良くて硬すぎないが大きな魅力なのに。

小笠原ー ちょっとペダルを踏んだら跳ね返ってくるし。という事で、自分の知ってるトレックと全然違うのもあって印象は良くなかった。

難波ー ふむ。

小笠原ー それで、それぞれのバイクを真剣に乗って最後にMadoneに真剣に同じ試乗ルート、登りも下りも平坦も十分に乗ってみたら、あれ?なんか最初の印象と随分違うぞ。と言う事になった。他の2台の時と同じようにペダリングしてるのに、何故か足が軽いんですよね。

難波ー 同じ印象は僕も持っていて、ヒルクライムは大差ないかなと思ったけど平坦と平坦気味の巡航、高速巡航は何か違う。前に乗ったMadone6とか、自分の持ってる先代Madone6と比べたらもう全然違う。ぶっちゃけ、ギアが本当に1枚以上軽い。

小笠原ー ペダリングで足の位置が3時を過ぎて、6時を回って7時8時に達するまでの速さが速いんですよね。他の2台だと意識して回していかないと行けない所がスッと回って行く。

難波ー 同じ印象を持った。5時半から回る。これね、ホイールの効果とかそんなのがあるのかな?と思って、アイオロス D3をターマックとEVOにつけてみたけど、そうじゃない。Madone7に他のホイールを履いた時の印象は、色々言いたい事があるので後でまとめて語るとして、この5時半からの感じは今までに感じた事の無い感覚。

小笠原ー 大体どのバイクでもある程度まともに作ってあるフラッグシップのバイクだったら足がある状態なら0時から4時位までは踏み込んで行ったらそのぶん進むんですよ。そこから先で回ってくれるか、回さないといけないかに差が出るのであってターマックとEVOは他の全ブランド並べても良く回る方なのに、そこの回る度合いに関しては、これは突き抜けている。んなことないでしょというアンチトレックの人も乗り比べたら、ウーン。。。と唸るようなものになっている。

難波ー トレックはエアロで40km/hで25W削減だとか言ってるけど、エアロが原因じゃないよこれは。

小笠原ー 今までのフレームでこの回転を出そうと思ったら、もっとどうしようもないゴチゴチの乗り心地のバイクになってると思う。

難波ー 踏んだ時にヘッドからダウンチューブを伝わってリアバックまでがバシッと板になってるような踏み心地はあるのに、乗り心地は総じてそんなに酷くない。旧型のMadone6の方が快適だったけど、スピードを上げて行くと段々印象が良くなっていく。35km/hぐらいからの方がベター。
ハンドリングではヘッドとフォークがつながってんじゃないかという一体感がある。感覚が新しすぎて、凄いのは解るんだけど個人的にはターマックのハンドリングの方が好みというか慣れ親しんで来たハンドリングで安心と感じるけど。

小笠原ー 個人的な印象では、乗り心地に関してはEVOと比べるとEVOの方が遥かに良いけど、段差を越えた時にドスンと一発で腰が痛くなるような突き上げでは無い。

難波ー 少なくとも乗っていて胃が逆流するような乗り心地ではないけど、低速で走ると角の取れたコツコツが来る印象は強い。その辺の逃がし方が今までのトレックと全然違う。

小笠原ー いわゆる高剛性バイクの乗り心地の範疇には入ってるので個人的にはOK。ガチガチのレーシングバイクな訳ですから、そこまで快適性を求めなくていい。ちなみにボントレガーのXXXハンドルは柔らかいんだけど、ここで乗り心地とかビリビリを吸収するためにこういう硬さに仕上げてあるんだと思う。

難波ー 昔のボロンカーボンの時のXXXハンドルは硬かったからその時代のGCバイクに合わせて作り替えているのかもしれない。ちなみにRADIOSHACKのプロは現行XXXハンドルは誰も使ってないけどね。

小笠原ー あのハンドルじゃスプリントする気がなくなるので使わないでしょう。プロはハンドルはアルミ。替わりにコースによってはバーテープを二重巻きにするとか緩く巻くとかで対応する。

難波ー 余談だけど、純正オプションのエアロハンドルは風洞実験ではかなり効果を発揮するらしい。時速40km/hで約6W。意外にハンドルって効くのね。

あと、腰回りの乗り心地に関しては、リアブレーキをBB下に持って行ったのでかなり良くなったとはチーフエンジニアは言っていた。エアロ効果もあってブレーキを下に持って行ったとか言ってるけど、実際はブレーキを支えるレイアップがシートステイに必要なくなるので、フレームの下側でペダリングパワーを支えて、上は乗り心地に振るっていう作り方はしているみたい。

小笠原ー その辺の新しい規格をシマノと作っちゃうのはよく頑張りましたと褒めたい。

難波ー ジオメトリーと睨めっこしても、先代とも殆ど変わってないし、EVOとマドンって元々ジオメトリーが似てるんだけど、52サイズH2FITの場合チェーンステイで2mm、トップチューブ長で1mm違うだけ。シートポスト角だけは1°ぐらいマドンが寝てる他は殆ど同じ。結局、このペダリング感の原因は、トレックが言うもの凄い莫大な時間をかけてFEA解析をやってるカーボンのレイアップなんだとしか考えられない。踏んだ感じは明らかに硬いし、見た目の印象の通り箱形で、薄い感じもするんだけど、フレームのどこかでは力を逃がしている感じもしてという。そのすべてがつながってるんでしょう。

小笠原ー これだけカーボンが進化して来てるとジオメトリーのBB下がりは別として、チェーンステイ長のバイクのかかりへの影響っていうのはレイアップとかでなんとでも出来る話にはなって来ているんでしょう。

難波ー ふむ。

小笠原ー もはや乗り心地のためにアルミの時代は常識だったベントステーとか死語になっている訳で。

難波ー チーフエンジニアに聞いたら40種類ぐらいのカーボン素材を使い分けてレイアップしてMadone7になってるというけど、その辺の味付けの仕方には自信を持ってるだけあって結果もついて来ているかと。

小笠原ー 今度のチーフエンジニアってベン・コーテスなんでしょ?

難波ー そう。

小笠原ー 昔自分がSUBARUチーム時代のチームリエゾン担当だったんだよね。彼も学生時代はトライアスロンとMTBでかなり強い選手だったらしい。

難波ー なるほど。

小笠原ー ペダリング感の話だけに限って言えば、他の誰が見ても問答無用の1流じゃないクラスのブランドのフラッグシップと比べると、2世代分位差がある。そのくらい突き抜けた存在になってしまった。そういうものが出て来てしまった感はある。

難波ー とはいえね、今までトレックを何台も乗って来た僕から言わせると、ロードでもMTBでも伝統のそのバイクらしさとかを大事にして鍛え上げるっていう作り方をするトレックが、こうも方向を替えちゃうって言うのはちょっとビックリというかなんというかの感はある。

小笠原ー もはや目をつぶって乗って、あーこれはトレックですね。というバイクじゃない。なので、トレックじゃないブランドがこれを出して来ても良いし、名前がマドンである必要もない。

難波ー 6から7じゃなくて根本的に名前を変えてしまって良かったと思う。

小笠原ー 10年位前のカーボンバイクだったら、トレックって他とどうしようもない差があったでしょ?5900の最後の頃。あの頃、乗ってたから解るけど本当にどうしようもない差だった。それがこの10年で、他のブランドもどんどん追い上げて来て、独自の味付けとかも出て来て、どうしてもトレックじゃなきゃ。という感じが多分往年のトレックファンにも薄まって来た。それで相当に追いつめられた結果なんだと思う。

難波ー 乗り味、デザイン、考え方を本当に全部フルモデルチェンジ。名前だけマイナーアップグレード。ただしトレックとしては、今までロードバイクの名前に絶対使わなかった7の数字を出した時点でジョーカーっていう気分はあるのかもしれない。20年掛かって5が7になった訳だからね。

今まで大切にしてた安心して走れるハンドリングとか、前後の剛性バランスとかはザクッと捨ててゼロから作り直して行く一発目がこれなんでしょう。

小笠原ー ペダリング感覚を極めた。とかは一言もトレックは言っていないどころか、むしろトレックらしさを大切にしましたとか言ってるけど、これは全然違う。マーケティング上の要素、軽いだとかエアロだとか腰回りのフレックスさだとかは網羅してるんだけど、このバイクの神髄はそんなもんじゃなくて、4時から8時のペダリング感だけに尽きる。今までに感じた事の無いペダリング感。新時代。
でも、3世代乗り継いできましたっていうマドンファンの中には、これに乗るとひょっとするとガッカリする人も居るのかもしれない。

難波ー そういう人の為に、6では今までのマドンらしさを残したんでしょう。

小笠原ー ああ、なるほど。そういう人は6を買えばいいのか。

難波ー フォークは硬いけど。

クルマで言うとトヨタのクラウンがゼロクラウンになった時とか、ポルシェが水冷になった時とかは、往年のクラウンファンやポルシェファンはこんなのクラウンじゃねぇとかポルシェじゃねぇとか言ってガッカリした人も沢山居た訳でしょ。とはいえ、単純にクルマとして考えると、クラウンもポルシェももの凄く進化した。それと同じと思えば良いのかと。

小笠原ー これが新しい感覚なんだから、もう、お前らこれ乗っとけという意気込みが伝わってくる。一回エンジニアに、どういうレイアップをどうやってこういう風に作ってるのかを丸一日レクチャー受けてみたい。

難波ー 確かに。

小笠原ー 今回乗ったのは2つ選べるジオメトリーの内の快適な方、H2ジオメトリーだった訳ですが、H1だとヘッドが短くなってるのでヘッド周りの乗り心地が悪くなってるんじゃないかとかは、ちょっと要確認ですね。

難波ー ただし、Madone7には致命的な落とし穴があるんだよね。

小笠原ー ブレーキ・・・。
 
 

Vol.8に続く

talk:Kenji Nanba,小笠原崇裕
photo:Kenji Nanba,The Bike Journal
date:13.3.14