世界の自転車の今と、Specialized 2014モデル

Specializedの2014モデルを語る前に、まずは世界の自転車事情について少々紹介したい。今回のGPLには総勢350人を数えるジャーナリストとトップ選手を含むVIPが参加したが、各国のジャーナリストと交流しながら見えて来た自転車の今は以下の通り。

ランス・アームストロングショック以来、世界的にフラッグシップ・ロードバイクの需要はイケイケドンドンと呼べない状況だが、マウンテンバイクは北米・ドイツ・フランス・スペイン・アジア各国など、世界各地で記録的なマーケットの拡大を続けている。日本ではマウンテンバイクについては・・・と言いたくなる状況が続いているが、世界的なトレンドを見ると高齢化と売り上げの伸び悩みが目立つロードバイクに比べて、マウンテンバイクの伸びは顕著。

トライアスロンの爆発的なブームも当分は収まりそうにない。世界各地のアイアンマンレースが、ものの数分で売り切れるという状況が続いているが、特にアメリカ・ドイツ・イギリス・オーストラリアでは、ロードレースの規模から見ても無視出来ない人口に育ちつつある。また、アメリカでは女性の間でトライアスロン人気が非常に高まっており、人口統計では48%のトライアスリートが既に女性で、来年中にも男性人口を追い抜く見込みとされる。

また、世界的に女性のサイクリストが増加しているが特に北米では伸びが顕著で、販売統計では北米では約20%の購入者が女性。年間30%以上の伸びを記録しており、ロードだけでなくMTB人口も爆発的に増えていると言う。

高級電動バイクについては、ドイツのみが突き抜けて人気で、アメリカではこれから普及段階といった所。非電動のコミューター需要はアメリカ、欧州共に旺盛。

ロードバイクの競技需要は、アメリカ、ヨーロッパで伸び悩みが見られ、特にドイツでは非常に低迷しているがロードツーリングに関しては世界各国で非常に大きな需要が見られ長距離系のチャレンジイベント、いわゆるシクロスポーティブは、アメリカ、欧州共に非常に人気。また中国でのサイクルスポーツは、遂に着火の兆しが見られ数年以内に中国を含むアジアがヨーロッパに並ぶマーケットに育つと見られる。

これらはSpecializedから提供された資料ではなく主に各国ジャーナリストの意見を聞いてみた結果をまとめた次第で、直接Specializedの新モデルとは関係ないが、この需要動向を見ると2014年モデルが非常に緻密な計算に基づいて市場に投入された事が解る。では、この世界的な需要を見てSpecializedはどう動いたのだろうか?



まず、2014年モデルでは、マウンテンバイクのテコ入れイヤーとも取れる程に開発力の非常に大きな割合をマウンテンバイクに振っている。詳細は個別に語るが、XCラインではS-WORKS STUMPJUMPER HT 29とS-WORKS EPIC 29を同時にフルモデルチェンジしてきた。世界のマウンテンバイクXCシーンで雌雄を決するTREKが13シーズンにSUPERFLYをハードテイル、フルサスの両方でフルモデルチェンジしたが、これを受けてSpecializedとしても対決を宣言した形である。プレゼンテーションでは20名以上のエンジニアをフルコミットで投入して2年の開発期間をかけて開発したと語られたが、この点でも昨年、「Biggest team ever」と語ったTREKに真っ向勝負を仕掛けている。


そして、130mm級の29erトレイルバイクCAMBERを投入し、140mm級のオールマウンテンカテゴリーでもSTUMPJUMPER FSRを後述の統合補給システム「SWAT」を導入してアップデート、DHレーサーではDEMO 8にSpecialized独占契約のオーリンズユニットを採用するなど、全方位抜かり無しというラインナップだ。

用品面でも昨年投入されたS-WORKSロードシューズのXC版とも言えるS-WORKS XCシューズを発表。同時に1日中のライディングでも快適でトレイルでの使い易さに特化したもうひとつのフラッグシップシューズ、S-WORKS TRAILシューズを発表した。北米で人気のウルトラファットタイヤを履いたバイク、Fat Boyも導入するなど、トレンドの抑え方は流石にSpecialized。



一方、ロードに目を向けると、主力の3フラッグシップ、Tarmac、VENGE、Roubaixの3種類には大きなアップデートはないが、今までのはなんだったのかと言いたくなる程に、ROVALホイールが本気になっている。聞くと、ロードバイクエンジニアも新ホイール「ROVAL Rapide CLX40、CLX60」の開発に労力を割いた模様で、ZIPP、ENVE、MAVIC、CAMPAGNOLO、BONTRAGERなどの競合ブランドと真っ向勝負してアドバンテージのある仕上がり、しかも上記の3バイクとのマッチングは抜群というモノになっており、同時にタイヤも投入するなど、まずは足元からフラッグシップロードバイクを見直した形だ。実際に、その成果は出ていると言える。


前述のシクロスポーティブとロードツーリング人気に合わせたのかどうかは不明だが、完全レーシングスペックの油圧ディスクロードバイク、S-Works Roubaix SL4 discを発表した。SRAM RED22油圧ディスクブレーキを採用している。これを筆頭に北米では、油圧Roubaixのフルラインナップ化が図られ、「Specialized goes disc-brake」とまで発表された。

また、中堅グレード、エントリーグレードのTarmac、RoubaixがSL4化されたのも人口の多さを考えると非常に大きなトピックだ。サイズに合わせてチュービングを変えて最適な剛性バランスを実現するのがSL4テクノロジーの肝であるが、これを手に入れ易くなったのは、スポーツサイクリストには朗報だろう。


そして、ロードバイクでは最大のトピックが「Back to Aluminium Again」である。登場から30年を経たアルミニウム素材を再確認し素材の特性を見直し、ゼロベースで現代のアイデアを投入して理想的なアルミニウムバイクを作ろうというアルミニウム復古運動とも取れる宣言だ。その、プロジェクトの陣頭指揮を取るためにアルミニウムエンジニアリングのカリスマをヘッドハンティングして挑んだこのプロジェクトの1作目として、S-Worksの名前を冠したフルスペックのフラッグシップアルミロードバイク、S-Works ALLEZを作っている。


最後にトライアスロンラインナップだが、SHIVにも統合補給システム「SWAT」が装着され、サドルがアップデート、ブレーキにMAGURAの油圧キャリパーブレーキを採用し、ロードバイクにも採用されるRapide CLXを採用するなど、フレーム以外を全部アップデートしている。

統合補給システムSWATやサドル、タイヤ、アクセサリーなど語るべきは山ほどあるが、個別に詳細を紹介して行きたい。
 
 

Specialized 2014モデル特集トップ

report:Kenji Nanba
photo:The Bike Journal
date:13.7.16