新型スピードコンセプト試乗速報:小笠原崇裕が乗る新型スピードコンセプト

437グラムの軽量化、それを知った時点で頭の中には先代のスピコン(スピードコンセプト)と比べて、加速性能と登りの軽さがどう変わっているのかという事が一番に浮かんで来た。というのも、先代スピコンはBB周りとハンドル周りの剛性が低かったのか、低速からの加速と、登りでのダンシングではマッタリ感が出過ぎていて、巡行スピードに乗るまでにペダリングが重くて時間が掛かり、登りのダンシングではハンドル周りとペダリングのリズムが取り辛い場面があった。新型は軽量化によって剛性が更に下がり、更にマッタリ感が出てしまっているのではないのか・・とワクワク感よりも大きな不安感みたいなものがあった。

フレーム前方部で30%の空気抵抗を低減と資料には書いてあり、空気抵抗も大幅に抑えられている。軽量化しつつ空気抵抗も減っているという事は、単純にフレームが薄くなっているというのでは?と考えてしまい、やはり剛性が下がっていたりバランスが崩れてマッタリ感が・・とモヤモヤしていた考えが、新型に乗り始めて10秒でそのモヤモヤは消え去った。

ダンシングで加速していくと、ギアを重く変速していくタイミングが早い。と言う事は素早く加速しているという事だ。体感的にも「スピードの乗りが良い」と感じる事が出来るのが新型スピコン。加速しながら「おお〜速いな〜!」とついつい口に出てしまった。

ハンドル周りの剛性は、ハンドルバー自体の剛性アップとステムを含めたヘッド周り全体が一体感のある塊になっているので筋肉量の多い体重の重いトライアスリートのダンシングでもフワフワ感は出ないだろう。ダンシングでの加速から高速巡行に移ると、加速時に見せたペダリングの軽快さが高速巡行時にも十分に残っており、ペダルを踏み込むというよりも、足を置きに行くような感覚でクランクが回ってくれた。先代スピコンがケイデンス低めのトルキーなペダリングがしやすかったのに比べ、新型スピコンはケイデンスは高めのリズミカルなペダリングが行いやすかった。

試乗コース途中に現れる短い登り坂では、ギアを1枚だけ軽くしてダンシングで一気に登り切り、元の巡行スピードまで戻すのがかなり楽に出来た。アップダウンの多いコースでこの特性は特に重要になってくるが、直進安定性を求め過ぎたり、高速巡行性を求め過ぎて加速の良さや、ダンシングのしやすさを捨ててしまうと、国内のトライアスロンのように直角コーナーやタイトターンが多いレイアウトでは、立ち上がりから巡行スピードまで何度も持って行く事に疲れてしまう。やはりTTバイクといえども加速の良さや軽さは絶対に必要。

走り始めてから気が付いたのは、乗り心地が良くなっていた事。特にリア。先代ではコツコツというよりもゴツゴツとダイレクトに路面状態を伝えて来ていたが、新型では競合他社のTTバイクよりも完全に1枚上手といえる程の乗り心地を実現していた。腰を据えてジックリとペダリングするのがTTバイクだが、乗り心地が悪くてサドルの上でケツが僅かに跳ねてしまって、適正な場所に何度も座り直しながら何時間も走るというのは無駄以外の何物でもないが、新型では荒れた路面でもしっかりとタイヤが路面を押さえ付け、跳ねが少ない。

フロントフォークも前後方向にワイドなブレードとなっており、空気抵抗の軽減により効いているだけかと思いきや、クラウン周辺の剛性が上がっているのか先代ではコーナリングでのアンダー傾向があったものの新型ではラインのトレースに気を使う事が少なく、コーナリング中にマンホールがあって段差になっていて乗り越えたとしても、バイクの挙動が大きく崩れてしまう事がなかった。剛性を上げつつ、振動の吸収性が大幅に上がっているように感じた。段差を乗り越える際に前後のホイールから同じような周波数の振動が伝わってくるので、バイクの真ん中に乗っていれば驚くほど乗り心地が良い。

そして先代では効き、メンテナンスともに大ブーイングだったブレーキ。新型ではどうなのかというと、申し訳ないが少しは効くようになったものの、ロードレーサーの9000デュラのブレーキと比べてしまうと、とてもじゃないが「効く」とは言えない。先代よりも確かに効くし、リム幅の変更もアジャスターで簡単に出来るようにはなっているが、それでも「もう少し何とかならないのか?」と感じてしまった。決して、止まらなくて危ないというものではなく、9000デュラと比べてというレベルなので間違えないで欲しい。

細かな点を見て行くと、本当に小さな改良が多く見当たる。車の屋根に載せる為には~とか、輪行する為には~とか、性能はもちろん実用性も大幅にアップしている。説明されなきゃ気が付かないような細かな点だが、オーナーになって日々走るようになると気になってしまう点が改良されている。


TTバイク(タイムトライアル)という呼称だが、トップチューブに取り付けるジェルを入れておくストレージや、シートチューブに取り付けるチューブラータイヤが収められるボックスを付けていた方が空力的にプラスになる事を考えると、トライアスロンに特化しているというか、トライアスロンに向いたバイクだという事が見えてくる。

こうした事から、インプレッションもロングのトライアスロンを模したアップライトなポジションで行った。それでいても向かい風の中での巡航では足に変な力みや、踏み込みが感じられなかったので、ハンドルポジションを下げて攻撃的なポジションにしたら巡航スピードの維持ではなく、スピードを常に上げて行くようなライディングをしてしまいような危うさもある。

空力や剛性を優先して、細かなポジショニングがコンマ単位で行えない固定されたハンドル周りという事もあって、気になってしまうライダーもいるかもしれないが、走行性能の部分と扱いやすさの面でTTバイクの完成形に近い仕上がりを見せている事は事実。マドン7同様、1世代、いや2世代先へ進んでいるTTバイクだと唸ってしまった。
 
 

report:小笠原崇裕
photo:The Bike Journal
date:13.8.8