スプリント性能とハンドリングから考える究極のホイール

ツール・ド・フランスも架橋を越えたが、ロードレースに使うカーボンエアロホイールとして考えると絶対に外せない性能の一つが、スプリント性能である。長らく自転車競技の世界を取材を続けて来た経験から言うと、ホイールに関してはハブやフリーのチューニングにこそメカニックの技術やチューニングが反映されているが、選手が使っているホイールはプロトタイプを除いては、確実に市販品と同じと言って良い。ましてや、本企画で採用しているホイールに至っては、それぞれのトップブランドが鎬を削って作り上げて来たプロ用のフラッグシップホイールだ。スプリント性能に於いては、ホイール同士で比べると差こそ出るが、それぞれ一つ一つのホイールで見た時の性能は、どれを取っても文句無しの一級品である。その事を踏まえた上でスプリント性能を考えて行く。

スプリントと一言に言っても、平坦のスプリント、登りのスプリント、横風のスプリントと多くの場面が存在し、ホイールによって仕掛けるタイミングもライン取りも変わってくるのは言うまでもないが、今回のインプレッションでは平坦無風の条件の中で行った。その結果、小笠原が導きだした結論はこうだ。「40km/hからのスプリントではオベマイヤの加速が際立った、少々荒い踏み方でもトルクの伝わりにロスが無く踏んだ分だけ加速して行く感覚が味わえる。コスミックも加速感は同等だが50km/hを越えた当たりから空力性能の差が出てくるのか伸びが若干少ない感じがあった。アイオロスはトップスピードまでの到達時間は長いもののロングスプリントでトップスピードを維持する時間が長くなり、大外から勝負を仕掛けるなら空力性能の高さからもってこいの一本。ボーラに関しては強い印象は無いものの、扱いやすくどんなタイプのスプリントにも対応できる凡庸性を持っているので迷ったら選びたい1本と言える。」

本気のレースで優勝を狙う選手以外にはスプリント性能は関係のない性能にも思えるが、やはりホイール全体としての性能が極限のスプリント性能にも、その傾向を如実に表していると言える。

一方で、ハンドリング性能を比較するとどうだろうか?この点については、レースのみでなく通常走行の楽しさにも大きく関わって来るポイントなので、ホビーライダー視点とプロ視点の2つの考え方で評価してみる。
まず、ホビーライダーとしての視点から4つのホイールを評価すると、普通のコーナリングや峠の下りを走って、素直にハンドリングが良いと感じられるのは、COSMIC Carbon Ultimateだ。MAVICのR-SYSに乗った事のある人なら、あの突っ張り構造のカーボンチューブスポークによる独特のハンドリングについては体感上ご存知と思うが、COSMICについても、構造こそ全く違えど、味付けを最終決定した人が同じなのだろうか同じ方向性を持ったハンドリングと言える。常識的なスピードで走っている限りは、非常に高い人馬一体感を味わえるホイールである。
BORA Ultra two、 AEORUS 9.0については金属スポークを使用しているからだろうか、4本のホイールの中では比較的近い印象のハンドリングだ。一言で言ってマイルド。その中で、AEORUSについては重量から来るマッタリ感が加わってラグジュアリーなハンドリングとも形容出来るコーナリング感覚が特徴的だ。4本の中で誰が乗っても一番安心して曲がって行けるホイールは、AEORUSと言える。一方でBORAはAEORUSに比べると軽快さが目立つが、常識的なスピードで倒し込んで行った時の盤石感は、AEORUS,COSMICに譲る。今回のテストでは、BORA、OBERMAYERにCONTINENTAL・COMPETITION TUBULARを、MAVIC、BONTRAGERについては専用にチューニングされた純正タイヤが用意されているためそちらを使用したが、その点を差し置いてもBORAよりもCOSMICやAEORUSの方が安心していられる。と言うか怖くない。私物として長くBORAを使っているだけに、BORAより遥かに軽いCOSMICの安心していられる感覚が新鮮であった。OBERMAYERについては、気持ちの良いハンドリングを語るには少し重量が軽すぎるのと、しなり始めの剛性感が少ないのかも知れない。限界付近の剛性感覚のテストでは、スプリントでの印象の通り全く問題が無いと言うか最高の一本であると上に述べられている事はOBERMAYERの名誉の為に言っておきたいが、サイクリングペースで使った時の気持ちよさは恐らくこのホイールの開発では想定していないのではないか?と思える通常ペースでのフロントのハンドリングの感覚。よって、通常ペースでの気持ちよさを考えると、COSMICの勝ちである。

一方で、レース機材として見た限界ハンドリングについて小笠原はこう語る。「ボーラが一番コントローラブル、ハンドルを強く握らなくても安心していられる。 コスミックはとにかく軽快。スパッとハンドルが切れ込む印象、コーナー突っ込んで行った時は、オーバーステア気味と感じる程にフロントが入って行く。アイオロスについては直進安定性が非常に強く、タイトターンではしっかり肩から入らないとアンダーステア気味になる。また、リムハイトを考えると横風にも圧倒的に強いハンドリング。オベマイヤは横風が吹くと慣れるまでは怖い、フワっと浮き上がりそうな感覚。ハンドルをしっかり握っていないといけない。」サイクリングペースでの印象とレースレベルでの印象は大きく別れる結果となった。
ここまで、実験結果とインプレッションに基づいてそれぞれのホイールを比較して来たが、当初の目的であるツールド沖縄210kmであったり、アイアンマンディスタンス・トライアスロンのバイク区間をより速く楽に駆け抜けられるホイールとは最終的に何なのか?次回、最終回では、その結論に迫る。

Vol.5に続く(近日公開予定)