日本の鉄、MIYATA JAPONを試す Vol.1
 
_DSC5490
 
ミヤタサイクルが展開する国産ハンドメイドバイク、MIYATA JAPON。そしてオリジナルSSTBチューブを採用したMIYATA SPORT。ハイエンドの3台を伊豆の峠で試した。

難波ー 今日はミヤタのスチールリバイバルライン、MIYATA JAPONとMIYATA SPORTの高級系を中心に試乗してみました。

小笠原ー 南伊豆でがっつりと軽く2000mは登ってみました。鉄なのに。

難波ー 端から見たら苦行ですね。

小笠原ー 意外とそうでもなかった。詳しくは後で語りますが。

難波ー ミヤタの歴史をね、全然知らない人の為にちょっと喋っておきます。

小笠原ー という僕も日本で最初に自転車を作った会社ということぐらいしか知らない。
 
_DSC5592
 
難波ー ヘッドバッジにはSince 1890とあるんですが、これが日本で最初の自転車が生まれた年。正確には1890年に会社を作って、1893年に完成させた。鉄砲職人の宮田さんが作った最初の1台です。

小笠原ー えーっとおよそ125年前?去年ぐらいにメルセデス・ベンツが125周年だってキャンペーンやってましたよね。その頃から日本で自転車が作られてたって明治って言うのはもの凄い時代ですね。

難波ー まさに文明開化。というかその前から鉄砲とか作ってたわけで安土桃山時代も捨てたもんじゃないけど。

同時にもう一つのハイライトは、やはりツール・ド・フランスでラルプデュエズを制してる事でしょう。しかも2度も。ヨーロッパに行くとミヤタの名前はオジさん世代のサイクリストなら知らない人は居ない程に名前としては有名なのは事実。
 
_DSC5541
 
小笠原ー 日本でミヤタって言ったらミヤタ・スバルレーシングのイメージが無茶苦茶強いですが、ツールで勝ってるっていうのはもう少し声高に叫んだ方が良いですよ。シマノだってツールで勝つのにあんなに苦労したのに、勝ってるんですよ1980年代に。

難波ー ヨーロッパの伝説的なブランドだってまだ1代目という自転車の歴史の中で3桁行ってるってもの凄い事ですよ。

小笠原ー まことにその通り。

難波ー そのミヤタのスチール復刻ラインは国産のミヤタ製のMIYATA JAPONラインとミヤタオリジナルのチューブやラグを使って台湾で製造されるMIYATA SPORTラインの2種類があります。

小笠原ー 今回はそれの上位ラインを乗ってみました。

難波ー 今回の試乗コースは、伊豆半島の右下の熱川をスタートして、とりあえず標高差で1000m程取っ替え引っ替えしながら登って、西伊豆スカイラインに出て、そこで行ったり来たりでアップダウンとコーナリングを繰り返しながらテストしてみました。
 
_DSC5384
 
小笠原ー 脱線しますが、うりゃっと1000m登れるっていう山が東京からその気になれば日帰りで来れるとは日本のサイクリストはやはり恵まれてます。

難波ー テストして行った順を追って紹介して行くとして、最初に乗った印象から語って行きましょうか?

小笠原ー 最初はTHE MIYATAのケンタウル仕様に乗りました。一番オーソドックスな鉄のフラッグシップ。
 
_DSC5527
 
難波ー 細身のフレームにスチールのベンドフォークを採用し、ジオメトリーも定番に乗っ取ったバイクですね。

小笠原ー シルバーコンポにブルー&メッキの仕様は凛として美しいなあとホテルを出てバイクを眺めながら、準備の都合から熱川近辺のフラットはサポートカーに乗ってスキップしていきなりヒルクライムで乗り始めたんですが、まあ最初の印象はやはり重いなと。完成車重量で8kgを超えてきますからね。

難波ー これでそこらのカーボンフレームよりもサクッと登るとか言い出したら小笠原崇裕も終わったなと読者の皆さんも思うことでしょう。

小笠原ー 感覚的には、カーボンバイクで練習用ホイールに練習用タイヤを履いたぐらいの重さ。登りたくない程の重さじゃ無いけど、色んなバイクがあって、そこからチョイスして登りに行くのにわざわざ選ぶようなバイクじゃないでしょう。

難波ー 元を辿ればラルプ・デュエズを制したバイクにルーツを持つ鉄フレームになんという暴言。

小笠原ー 僕が補助輪取れた頃はこれでも軽くて、ヒラヒラと登るって表現されたんでしょうけど、30年経った今ではカーボンバイクが幾らでもありますからね。

登りながら悶々と果たしてこのバイクでわざわざ登りに行く必要があるのか?仕上げも塗装もアッセンブルも美しいんで床の間に飾っとけば良いんじゃないかとか思いながら天下の天城越えをした訳です。トンネルがあるんで大して辛い峠じゃないですけど。
 
_DSC5585
 
_DSC5601
 
難波ー 塗装の話に脱線しますが、これのゴールド仕様っていうのがあって、それは18Kの本物の金をコーティングした仕様で、ブルーに塗ってある塗装のその下側にも純金が塗ってあるゴージャス仕様があるの。実物見たら泣ける。

8万円ぐらいのアップチャージ。決して少なくない量の純金を使ってると思われるのでどういう原価計算なんだと言いたくなりますが。

小笠原ー まさに床の間仕様。

話は戻って、有名なループ橋をグルグル登ってしばらくすると勾配も少しは緩くなってきて、まあこのくらいなら重さの影響はそんなにないかな?とか思いながら天城トンネルに入ったの。
 
_DSC5421
 
難波ー トンネルの中は路面も悪くて凸凹でしょ?

小笠原ー そこまで凸凹じゃないけどゴツゴツな路面。昔ながらのベンドフォークだし、ホイールも手組の32Hだから、乗り心地自体は悪くない。鉄フレームにしか出せないビヨーンとした振動吸収性があってカーボンフレームとは違う意味で気持ちいい。でもその分、パワーも食われてるっていうのが印象。その辺の剛性と快適性のバランスの出し方は、流石にうまく仕上がってる。

難波ー ルーベとかドマーネと比べるとゴツゴツ来るわけですが、昔ながらノスタルジーを感じながら走る分には、それはそれで気持ち良いと僕も思います。そうして峠を登りきって下りに入るわけですが。

小笠原ー 300mぐらいの標高差を一気に下るわけですよ。結構カーブもあってスピードも出る下り。

難波ー ほんの30分前に初めて乗ったバイクで初めて下った訳ですよね。

小笠原ー 下り初めて最初のコーナーから、ズドーンと突っ込んでスパーンと曲がっていけるんですよ。普通の自転車って最初の下りはどんなもんかな?って様子を見ながら下る訳ですが、何故か最初からズドーンのスパーン。その後も、まさにサイドバイサイドのコーナリング。

走りながら、「あれ?なんかオカシいなと」思うわけで、下りながらスプリントしてみたり、下りながらコーナリングの角度やラインを変えてみても、どういう走り方をしても安定してるんですよ。

マンホールとかグレーチングの段差の衝撃のいなし方もなんじゃこりゃの域。
 
_DSC5669
 
難波ー 自分もその後に乗ってみた訳ですが、一言で人馬一体。マドンとかターマックみたいにカミソリみたいにスパーンと曲がるっていうんじゃないんだけど、狙ったラインにするっと入っていける。怖くない。

小笠原ー 単純に下りのスピードで言ったら下りの速いカーボンバイクの方が速いのかもしれないけど、このハンドリングの思い通り具合はもはや異常ですね。かつて経験したことのない曲がり方。

難波ー このフィーリングの理由がフレームの設計にあるのか、それともミヤタの職人さんが言っていたセンター出しへの執着がもたらしているのかは解らないんですが、とにかく気持ちよく曲がる。

カーボンバイクって、どんなにセンターを出して作っていっても、よほどのクオリティコントロールの出来ている一部のブランドのフラッグシップを除いてコンマミリでのセンタリングって難しい。

鉄のメリットは、どんなにセンターを出してザグッても溶接で熱を加えて冷ますとセンターが狂う訳ですがそれをもう一度曲げて直せる。で、これの場合は更に完成車を組むときに元チームミヤタのメカニックの人がヘッドパーツを組み込んだ後に更にセンターを出して、ホイールとのセンターも出しているっていうの。そんなにセンターが大事なのかというぐらいに。

小笠原ー そのセンター出しの話は僕は最初は聞かずに走ってた訳ですが、右に倒しても左に倒してもどっちもバシッと安定して曲がるんで、マウンテンバイクで言ったらクロカンバイクからオールマウンテンに乗り換えちゃったぐらいの盤石度合いだなと思って乗っていました。お世辞抜きに。

走る金属フレームっていうのは跳ねて跳ねて、それを力で押さえて走るっていう印象を持っていたんですが、今回はその先入観を完全に覆されましたね。

難波ー センター出しにそのフィーリングのすべてが宿ってるとは思いませんが、影響を与えているのは事実でしょう。

小笠原ー 100年の歴史で突き詰めてきたド定番のジオメトリーに乗っ取ってるとか、絶妙なフォークの曲げ具合とか色々あると思います。

ただし、右に曲がっても左に曲がってもまったく同じフィーリングで曲がって行けるのは明らかに芯が出てるからでしょう。どこにも唐突な所がない。まるでメトロノームのように右にも左にもスムーズに曲がる。

難波ー パイロンスラロームが速くなりそうです。

小笠原ー 笑。とにかくロードバイクの下りが怖くてたまらんっていう人には、登りの重さを置いといても、あの安定感はもの凄いアドバンテージになると思う。

難波ー じゃあTHE MIYATAについてまとめてみましょう。

小笠原ー 下りは確かに気持ちいい。一方で下るためには登らなきゃいけない。なので体力がある人向けのバイクと言えるでしょうね。

難波ー そこそこ乗っていて、色んなバイクの事を知っている玄人向けのバイクという事は間違いないでしょう。そういう人が初心者の人とツーリングに行って使ってみても良いと思います。登りはそこそこのペースで登って、下りは自分だけのお楽しみ時間と言うことで。

小笠原ー 既に世の中にそこそこの台数は出回っているみたいなので、何かの機会で乗れるチャンスがあったら見るだけじゃなくて乗ってみる価値はあるでしょう。曲がって初めて真価が解るバイクですね。

難波ー 2、3コーナーで解る。間違いない。

小笠原ー 次行ってみましょう。そうして下りった所に道の駅があったので、Elevation RCに乗り換えたわけです。

Vol.2に続く

MIYATA JAPONオフィシャルサイト 
 
 

talk:Kenji Nanba, Takahiro Ogasawara
photo:The Bike Journal
date:14.5.1