2010 SUPER RECORD 11S Ergopower

カンパニョーロ信奉者なら性能云々以前の前に避けては通れぬお布施がSUPER RECORDだ。1974年、自転車用の量産コンポーネントとして初めてチタン素材を投入した初代にして先代CAMPAGNOLO SUPER RECORD。その布石は、その数年前に伝説のロードレーサー、エディ・メルクス氏のアワーレコード挑戦の為につくられたスペシャルコンポーネントに端を発する。当時としては、超最新鋭素材であったチタンをBBシャフトなどにふんだんに使い、徹底的にドリルアウトを施したスペシャル仕様。コルナゴとカンパニョーロのタッグで開発されたバイクの総重量は、1971年にして、5kg台中盤を実現したという。その開発で得たノウハウをふんだんに投入した初代SUPER RECORDは、今も昔もカンパニョーロファン憧れのスーパーブランドである。
2009年に24年ぶりに復活した伝説のネームは、11速を引っさげて伝統のチタンとカーボンを融合させたフラッグシップとして帰って来た。とはいえ、往年のファンに言わせれば「インパクトが足りぬ」。カーボン素材の多用自体は、RECORDグレードでも行われているしチタンパーツについては、10速時代のレコードでもふんだんに使用されていた。回転部分にセラミックベアリングの使われるクランクセットやディレーラーに比べて、このエルゴパワーに至っては、内部構造にチタンパーツの使用ぐらいしかRECORDとの差がなく、事実上性能が変わらないためSUPER RECORDたる所以に欠けている。そこで、カンパニョーロのデザイナーやプロダクトマーケティング達が考えた苦肉の策がドリルアウト。性能を犠牲にしないように、丁寧に開けられた3つの穴が、果たして軽量化にどれだけ効果があったのか?乱気流を巻き起こして逆に遅くならないのかなんて聞いてはならない。前述のSUPER RECORD開発の歴史を考えると、この3つの穴こそエディメルクス譲りのドリルアウトである。この伝家の宝刀SUPER RECORD+ドリルアウト。これに価値を見出せない人はエルゴパワーはRECORDで十分である。
一方で、単純にシフトレバーとして見た場合のSUPER RECORDの性能は、やはりSUPER RECORDだ。発表時は物議を醸し出したデザインだが、初代のトンガリエルゴパワー、2代目のコンパクトと3世代に渡ってエルゴパワーを使って来た身でモノを言うと、ベストエルゴパワー・エバー。過去最高。ちなみに、7600デュラエースからのSTI全モデル、SRAMを含めても、このエルゴパワーの握り心地は間違いなく最高。ちなみに、先代エルゴパワーをベンチマークに開発したと思われるSRAMは、09エルゴパワーに次ぐ2位。7900DURA-ACEは論外。故に、09SUPER RECORDは過去最高。ライディング中、常に手が触れているブラケットの握り心地はライディングの気持ち良さを左右する最重要部品だ。その点に手を抜いていないと言う所は流石にカンパニョーロ。変速性能は、シフトダウン5速、シフトアップ3速の一気変速が出来るメリットや名前の通りエルゴノミクスなレバー配置もあって総じて印象は良い。特にフロント変速に関しては、旧世代の10速レコードは何だったのか?と言いたくなるぐらい進化している。11速化のデメリットは変速微調整の面倒さ意外には無い。チェーンが新品に近い状態での変速感は、「カシュン」と乾いた音かつ滑らかな感触で、この点でもシマノよりも感覚的に気持ち良い音を実現している。リアの変速性能は、厳密に言うとDURA-ACE(機械式)の方が上かもしれないが11速である事を差し引くと、同等と言える。この印象はDURA-ACEが電動になってもリアは大して進化していないので、一気変速の容易さを考えると総じてSUPER RECORDの勝ちかもしれない。
ブレーキフィールに関しては、7900DURA-ACEが可哀想な事になっている事を考えると、SUPER RECORDは素晴らしい。スムースさ、モジュレーション、レバーの形状ともに文句無し。レバー剛性に関してもカーボンとしては合格。前作では耐久性(スモールパーツが簡単に手に入るので、メンテナンス自体が簡単な事もあって問題なかった)が・・と言われていたRECORDエルゴパワーだが、SUPER RECORD 11Sに関しては、1万km程度走った個体を見ても普通に節度感のあるメンテナンスフリーさを持っている。ただし、ブレーキアーチを解放するアルミノッチが電触によって固着しやすいので、たまにグリスを塗っておくなどのメンテナンスが必要なのは、少し残念。
総括すると、デザイン・仕上げ・変速性能・エルゴノミックまで含めたトータルのハイエンドサイクルパーツとしての性能では個人的にはカンパの勝ちではないかと思う。
2011のマイナーチェンジではワイヤーのルーティングが小変更されて内部構造も見直されたので、このSUPER RECORD 09よりも更に滑らかになっているがその話はまた後日。