BIONX、自転車の未来

数十分で既存のスポーツバイクをエレクトリックバイクにコンバージョン
BIONXを知っているだろうか?今、北米で大流行しているエレクトリックバイクコンバージョンキットの大手ブランドだ。ハブ軸モーター内蔵のホイール、バッテリーユニット、コントロールユニットの3点セットで売られ、市販のスポーツバイクをものの数十分で電動アシスト自転車(電動アシスト自転車という呼び方は正しくないかもしれない)にコンバージョン出来るレトロフィットキットだ。

BIONXと書いてバイオニクスと発音する。出力は低出力タイプの250W、ヒルクライム仕様の350W、高出力タイプの500W仕様の3種類で、軽量タイプも用意されるがTHE BIKE JOURNALでは今回350Wの標準ヒルクライム仕様を入手する事が出来た。

先に断っておくが、本キットを装着しての公道走行は道路交通法及び公安委員会による細則に違反する。何故なら電動アシスト自転車として規定されているアシスト量を大幅に上回るパワーと、フル電動バイクとしてのスロットルでの走行が可能だからだ。ちなみに必要な手続きを得て原動機付き自転車として登録すればナンバーや補機類を装着した上で公道の走行は可能である。今回、THE BIKE JOURNALでは北米の公道及び国内のクローズドされた場所でBIONXのテストを行った事を述べておきたい。

BIONXを紹介する理由
では、何故に公道で走れないエレクトリックキットを日本に紹介するのか?理由はいくつかあるが、世界で進みつつある急速なスポーツサイクルの電動アシスト化を日本に紹介する事が主な理由だ。今回はまず手始めに何の変哲もない普通のクロスバイクTREK SoHoにBIONXを装着してみた。何故SoHoなのか。実はTREKは、このBIONXキット(と思われる)を装着したエレクトリッククロスバイクをアメリカ市場で発売している。エレクトリックバイクは彼の地ではそのくらいメジャーな乗り物だ。そんな理由もあってSoHoに装着してみた。

人間ランスアームストロング
そのインプレッションは、もはや「自転車の未来」以外の単語が見当たらない乗り物である。トルクセンサーを利用して踏力の最大300%までアシストしてくれるフルパワーモードでは、時速5km/hを超えた瞬間からアシストが始まるがその加速はもはや異次元。人間ランスアームストロング。
それもそのはず、こちらが120W程度の力で踏めば350W(約300%)のモーターアシストを加えて470Wのシステム出力となる。足を軽く触れているだけのつもりなのにこの加速は暴力的の一言でハンドルに掴まっておかないと振り落とされるぐらいのアシスト量である。そして、ペダリングトルクの強弱をトルクセンサーが逐一判断して出力がフラットになるようにアシストを続けるので、地下鉄ですかこれは?という加速感で進んで行く。
BIONX PL350はヒルクライムに長けたシステムとBIONX自体が謳っているように、ヒルクライムでの加速は人間マルコパンターニ。試しにロードバイクに乗る小笠原選手と競争してみたが、普通なら1踏みで私が千切れる所が、笑顔で踏んでも彼は視界の後方に消えて行った。アシストは時速32km/hまで持続するが、普通の坂、例えば乗鞍スカイラインぐらいなら誰でも時速32km/hを全域でキープしたまま登れるぐらい速い。しかも心拍は150bpmぐらいで。クロスバイクに装着した状態でコレだ。ロードバイクに装着したらどうなるのかは想像しただけで冷や汗が出る。

バイクというより自転車に近い乗り味
それはもはや自転車というよりバイクなのでは?という声も聞かれるが、あくまで自転車に装着するレトロフィットキットであり、ポジション、ペダリング自体も自転車そのものなので、乗車感覚は完全に自転車そのもの。それでいて加速はバイク。ちなみにキットによって重量が+5kg程度増えるのでハンドリングは鈍る。モーターの出力アシスト量は任意に4段階で変更可能なのでマイルドなアシストでの走行ももちろん可能だ、逆にジェネレーターモードとしてモーターを発電機として利用しながら走行する事も出来る。ちなみにこの場合、最大負荷の発電モードでは私が心拍180bpmで踏んでも時速12km/hしか維持出来なかった。そのくらいに負荷が高いのでTrainingモードと名前がつけられているが、アメリカでは深夜の街中でアマチュアアスリートがTrainingモードで練習しているとかいないとか。

これ以上の詳しいインプレッションは後日に紹介するが、今、アメリカとドイツではこのE-BIKEと呼ばれるジャンルの自転車が急速に増加している。特にメカ好きのドイツではMTBにエレクトリックキットを装着してトレイルを走るのが流行で、昨年のユーロバイクにも多数のメーカーがコンセプトバイクを出展したのは記憶に新しい。また、坂の町サンフランシスコでは街中の至る所にエレクトリックバイクが散見される。中国の電気自転車の普及度合いももの凄い(上海などでは市内でガソリンスクーターが禁止されているため、基本的に電気スクーターかフル電動自転車)が、ドイツとアメリカのそれは、実用の物というよりスポーツバイクとして進化した別カテゴリーのものである。
日本でもYAMAHAなど、電動自転車の長い歴史を持つメーカーがあるが、法規制もあってメーカー本来が持っている実力を発揮出来ていない。その一方で正直言って世界は激変しているのが現実だ。

BIONX特集vol.2 小笠原崇裕の乗るBIONX
 
 

report: Kenji Nanba
photo: The Bike Journal
date:2012.2.4