小笠原崇裕の乗るCANYON AEROAD
フィリップ・ジルベールが2011シーズンに乗ってUCIワールドツアーを総合優勝した奇跡のバイク、CANYON AEROAD。国内に正規では入って来ていないCANYON AEROADの走りはどうなのか?小笠原崇裕が日本初試乗(THE BIKE JOURNAL調べ)。

一目見て、薄い。フレームが薄い。
走り出してみると個性的な見た目とは裏腹に、尖がった部分が見当たらない個性の少ないバイク。
フレーム全体の剛性としては高めに作られてはいるが、ターマックのように全部が全部ゴチゴチではなく、後三角はショック吸収性を狙ってだろうか前三角と比べて幾分ソフトになっている。そのためか路面追従性も良く、ペダルを踏んだときの硬さから想像するのとは違い、荒れた路面でも跳ねにくい。
後三角でショック収集性を狙い過ぎて前三角とのバランスが崩れる事もあるが、後三角を小さくしてバランスを取り、ついでに軽量化も達成しているのだろう。

エアロ形状のフレームの効果はハッキリ言って判らなかった。体感できるほどバイクの風抜けが良かったとは感じなかったが、こういったエアロ形状は見ていてカッコイイ!実はこういったソウルの部分がレースでは大切なので、それを視野に入れてのデザインかもしれない。
得意な走り方は高速域での巡航。ペダルの回転数を一定にしなくてもバイクは一定に巡航しようとする特性があり、風や路面の変化によって上がり下がりする回転数やスピードもバイク自体が補ってくれる印象。向かい風で一瞬強く吹けばスピードが数キロ落ちるか、落ちないようにペダルに力を込めるかのどちらかになるが、この落ち込みが丸チューブのバイクに比べて少なく感じる。という事はエアロ形状の効果があるって事だろうか?個人的には無風の状態でワットが軽減される効果よりも、四方八方から吹く風に対してワットが軽減される効果の方がレースでは効くだろう。

高速巡航は気持ちが良いが、10%を超える様な登りではパリっとした乾いた軽さが少なく、一踏み一踏みが少々重たい。この重さはこの部分から来る、という感じではなく、全体の設計として登りはスポイルしてでも高速域に振っているのかもしれない。それはトップチューブの長さからも判るように、ハンドルの上バーを持って登るという事よりも、下ハンを握って高速で走るという事を考えての事かもしれない。あくまで推測だが。
伊豆や群馬CSC程度の登りならこの登りの重さは慣れたり、登りへの入り方で問題のないレベルだが、10分を越える登りでは「早く下りたい」欲求が出てくるだろう。
下りでは直進安定性が高く、スピードが低く感じる。これも後三角がもたらしているのだろうか。このフレームの細さから想像する以上にヘッドチューブがしっかりしていて、わざとハンドルをこじってヘッドチューブに負担を掛けるようにスプリントしてもステムとハンドルが捩れるだけでヘッドは真っ直ぐ前を向いていた。
フォークは可もなく不可もなくだが、欲を言うと、時速40キロを越えるコーナー途中でマンホールやグレーチングがあるとフォークエンド辺りが若干弱いのかアンダーが少し出る。しかし、しっかりしたタイヤを選択していたり、ビビってブレーキを掛けてしまわなければ問題のないレベル。ブレーキの方向にももう少し粘りが欲しいが、急ブレーキ性能を追い求めて重量が重くなる位ならこのままでも良いという些細なレベル。

気になった点はトップチューブが長い。私はジャストサイズのフレームから1サイズ小さいか、大きいか、どちらか選べといわれたら小さい方を選ぶ。大きいサイズではそのバイクが最も進む位置に自分の重心を持っていくポジションを取る事が安易にできる、小さいフレームでは許容範囲が狭く難しいが、同じ様に最適なポジションを取った場合に、小さいバイクの方がより効率的に速く走れる事が解っている。このエアロードはトップが長いので腕が短かったりするライダーはステムを短くしたり、オフセットしていないシートピラーを選択しないといけないかもしれない。

個人的には好きなスタイリングだ。ただ、ジオメトリーがしっくりこない。
どの部分を優先するか!?悩みのドツボにはまってしまうようなバイクだ。
 
 

report:小笠原崇裕
photo:Kenji Nanba
date:2012.2.9