DURA-ACE陥落か!?NEW RED最速試乗 vol.2

NEW REDの本題であるドライブトレイン周りはどうか?単刀直入に言うと大幅にアップグレードされており先代とではREDがRED ULTRAになったぐらい違う。

まず、先代では不評だったクランクセットであるが、新型は、クランクアームの内部をスパイダー部分まで中空化しておりアーム自体の剛性を大幅に上げている上に、チェーンリングも切削方法の変更でやはり横剛性を上げている。

個人的には先代のマッタリとしたクランクの踏み味も嫌いではなかったが、シリアスなレーサーにはDURA-ACEのようなゴチゴチとした踏み味が好まれた事も事実だ。故に、中空スパイダー化では踏み味が明らかに解る程固くなっている。ただし鍛造アルミのようなキンっとした踏み味ではなくて、カーボンのウェッティな踏み味がある。踏んでいてスパイダーが中空になっていることなど解る訳もなかろうと言われるかもしれないが、踏んでみると、「あー、中空だ。」と言いたくなるような何とも言えない感触が足に伝わってくる。

先代のフロント変速性能に問題となっていたチェーンリングは、両手で持って捻ってみると解るぐらい横剛性が高くなっているが、やはり冷間鍛造技術やらコーティングやらにはシマノの方が進んでいるようでDURA-ACE比では弱い。そんなの解る訳無いでしょ?という人は、実際に両方手に持って曲げてみて欲しい。きっと解る筈だ。

クランクのデザイン自体は、細身でスリムだった先代に対して新型では中空カーボンスパイダーなので大幅に太くなっている。チェーンリングのデザインでそれを隠そうと頑張っているが、クロモリやチタンバイクに装着しても格好良かった先代に比べると、新型はカーボンフレーム「専用」のデザインだ。ちなみにそれとトレードオフしても余りある程に軽く高性能になっているのもまた事実。先代は先代で格好良かったがコレはもう戻れない。

フロントディレーラーのYAWテクノロジーは要するに実物を見ると、フロントディレーラーのリンク裏側が3次元形状になっていて、ガイド(と呼ぶのか?)がそれに沿って動く事でプレートが3°首を振る機構な訳だが、これの効果は明らかで、従来比ではスパスパと変速がトップ側からでもロー側からでも入って行く。ただしその変速の仕方は、チェーンを引っ掛けてヨイショと持ち上げているメカニカルな感じで、DURA-ACEの強いトルクを掛けて踏んで行ってもヌメヌメっとチェーンが持ち上がって行く感覚とは異なる。

感覚的には、新品のチェーンに軽いオイルを塗った10速時代のカンパニョーロ・レコードに似ていると頭の中で想像したが、実際にレコードに改めて乗ってみたら、REDの方が10年進んでいた。最新の11速SUPER RECORDとどっちが好きかと言われると甲乙付けがたい仕上がりだ。

調整されていない個体と、されている個体の両方に乗ったが、やはり首振り機構が入っているだけあってフロントディレーラーのアッセンブリに関しては、かなりコツが要るとの話だったし、実際実物を目にしても明らかだ。Di2もそうだが、最新のフロントディレーラーの性能を完全に発揮させるには、やはりちょっとした職人芸が必要になる。

ちなみに、チェーンキャッチャーの調整は従来のアフターマーケット品に比べるともの凄く容易で、欧州SRAMの担当者曰く、重さにして10g程度なので「文句無しに」装着しておいた方が良いとの事。プロからのもの凄く強い要望で装着された機構だというが、恐らくアンディ・シュレクであろう。

リアディレーラーとカセットスプロケットに関しては、フロント周りよりも驚いた。個人的には先代REDでも変速性能は全然OKだったが、音に関しては我慢ならなかっただけに、この静音化は本当に大きい。リアディレーラーは特に大きな機構的な変更は無いが、シフトレバーのタッチはディレーラーの改善もあって軽くなっている。

ビッグプーリーを昨年のツールなどでテストしていたが、何故導入しなかったのか?と聞くと「企業秘密」と言って笑っていたが、どうやらトラブルがあったらしい。一方で、新しいディレーラーには変速をサポートする動きがプーリーに設けられており、その他の改善と相まって変速スピード自体は従来比で確実に速くなっていた。節度感には好みがあるが、絶対的な変速スピードはDURA-ACEと変わらないだろう。9000系DURA-ACEが登場するのは間違いない(11速で4アームなのも恐らく間違いない)が、現時点では7900は10速だ。10速同士で考えるなら、もはやこの差は個人的にはどっちでも良い。

先代の走行時の音の原因はプーリーに問題があるとばかり思っていたが、問題の大半はスチール削り出しのスプロケットにあったようでチェーンがスプロケットに接地した際の音がスプロケット内を反響していた事が問題だったそうだ。よって重さ数グラム程度のブッシュを装備している新型REDでは、チェーンの接地時にスプロケットの金属部分にチェーンプレートが接触しない構造となっており劇的に、本当に劇的に静かになっている。ちなみ、このブッシュによってチェーン接地時にチェーンオイルが飛び散ってしまう症状も軽減しており、長距離に渡って潤滑も維持出来るようになっている。REDは主要なベアリング部分にセラミックベアリングを採用しているので、ドライブトレイン周りの動きは非常に軽快である事はDURA-ACEに対して大きなアドバンテージである。
 
 

report:Kenji Nanba
photo:The Bike Journal
date:12.3.1