ロングライドで試すドマーネの素性

シーオッタークラシックのついでに、同イベントで開催されているグランフォンドのルート、アメリカでも有数の風光明媚なツーリングルートとして知られるモントレー17マイルドライブとその周辺のRoute1でドマーネに乗った。TREKはドマーネを本物のパヴェレーサーとして開発したと言っており、春のクラシックレースで実戦に投入されているマジもののレーシングバイクであるが、私自身が春のクラシックレースを走る訳ではないので個人的に気になるのは本物のレーシングバイクである事よりも200kmを超えるようなロングツーリング用のバイクとしてドマーネはどうか?という事だ。

西海岸をサンフランシスコからサンディエゴまでつなぐRoute1は景色こそ綺麗だが、この区間の一般道路部分については、ある意味実用の道路としてはとっくの昔に捨てられたヒストリックルートなので路面はつぎはぎと所々に穴ぼこの開いた走り易い良舗装とはちょっと言いがたい路面。日本で言えば、秩父の奥の方の群馬や長野県境に接する旧道や、京都の北の方の山奥に似た舗装だ。150m程度のなだらかなアップダウンを延々と繰り返すこのルートだ。

走り出すと普通に走っている限りは平坦でも登りでも殆どマドン。普段私が乗っているマドン6よりフレーム重量で100g程重くなっているようだが、そもそもアルテグラがついている時点で結構重くなっているのでフレームの重量差自体はよく解らないが、走り自体は全然気にならない。リアセンターが少々伸びて、驚く程BBドロップの大きなジオメトリーも全然気にならない。トレックのトレックブランドのジオメトリーについては、長く乗っているのもあると思うが乗った瞬間から違和感なく体に馴染む所が不思議。スプリント性能は一人ツーリングにはどうでも良い性能だが、マドンより若干前に出る印象。

驚いたのはやはりドマーネの特徴である衝撃吸収性。高速の下りでデコボコ路面に遭遇すると、マウンテンバイクの癖でつい腰を浮かせて肘の力を抜いて衝撃に備えてしまうが、脳内予報で体に伝わる振動を「ゴチンッ」と想像すると肩すかしを食らう。ドマーネでは、「ゴチンッ」が「ポコンッ」なのだ。「ボヨン」でもなく「ポコンッ」。衝撃に濁点がない。奇想天外なドマーネサスもそうだが、それよりもフォークが良く出来ている。マドンに於いては、実は先代のフォークが振動吸収性が高くロングツーリングに向いていたがレーサーからはフォークレッグの剛性不足が指摘されて現行モデルで結構剛性を高めて来たので、その点現行マドンと比較してドマーネのベンドフォークの振動吸収性は輝いてみえる。一方でネガティブオフセットされたフォークエンドは、どこかで見た事のある構造だが、これも衝撃吸収とハンドリングの両立と言う面では効果覿面で、ハンドリングにネガティブが一切ない。この手のレッグをベンドさせて衝撃吸収を狙ったフォークは、下りのハンドリングでフォークレッグの下側がフワついて微妙に怖いという感覚が出がちだが、その点を上手く抑えている点が流石に後発であるしトレックだなと思った次第。

一方で、ドマーネサス(勝手名称、正式名称はISO SPEED)は、集団の中で変な動きが取れず、前が見えない状況でデコボコがやってくるマスドロードならいざ知らず、一人ツーリングにおいては大きな衝撃では腰をあげれば良いだけなので余り意味がないのでは?と思いがちだが、実は普通に巡航しているときの路面からのビリビリがこんなに体にストレスだったのか?と思い知らされる程、サドルに微振動が伝わってこない点が素晴らしい。果たしてカーボンシートチューブのしなりが効いているのか、ISO SPEED機構にくっついたゴムブッシュやらベアリングやらが効いているのかは解らないが、とにかくビリビリ来ない。同じくハンドルもトップ部にハンドルをえぐってジェルを内蔵しており、こちらはハッキリ言ってもはや素手で乗って良い。勿論ドマーネサスの大きな衝撃の吸収性も200km程走る程になっては腰痛に効果覿面に効いてくるのは言うまでもない。当社比50%の衝撃吸収性と謳っているのには偽りはないというのが率直な印象。

ドマーネの残念な所は、徹底したマーケティングの結果生まれたであろうそのルックス。スペシャライズドのルーベSL3が如何にも衝撃吸収しますよというルックスなのに対して、ドマーネは説明されなければ普通のレーシングバイク。そこが良いんですよという人が大半だろうが、個人的にはドマーネサスの見せ方についてはこれだけ奇天烈な構造なのだからカウルをつけて隠さずに、もう一捻り欲しかった。

あと名前。慣れたのでなんともないが、口頭でも原稿でもマドーネ、ドマーネと間違いやすい。ただし、アメリカ人にはこの発音はウケたらしく、乗っていると方々(シーオッター期間中なので、モントレー市内はサイクリスト一色のため皆、ドマーネを見たら解るみたい)で「ドマーネェ」と呼ばれた。

また、走り自体はTIME系のビヨヨンっとBB付近のウィップを使って走るタイプのバイクではなく、BB周り、特にダウンチューブがしっかりしたバイクなので、ドマーネサスとその他のお陰で手や腰には来ないとはいえ、足と膝には普通のレーシングバイク並みに走るのと引き換えに普通に疲労が来るという事は言っておきたい。ただしこの点もマドンと同じ感じなので、コルナゴの固いバイクやターマックSL4みたいなのとは違う。

エアロロードの次はエンデュランスロード(別名パヴェレーサー)と次から次へと新しい流行が来るのはどうかと思うが、乗ってみると「ああ、素晴らしい」となるので不思議なものだ。ドマーネは誰にお勧めか?と聞かれると答えはヒルクライム専門職以外の全員。特に、週末に2日続けて200kmを乗る様なツワモノや、結構走れるブルベ系の人には絶大な効果を発揮するだろう。

日本の良舗装で走るのにそんな衝撃吸収性は要らないのでは?と思う人もいると思うが、ドマーネサス搭載のネガは100gの重量増以外一切ないと言って良いので、舗装の微振動がビリビリ来ないのは国内でも十分に快適。例えばミドルクラスからハイエンドバイクに乗り換える1台目ならドマーネを選んでおけば間違いはないと思う。

※試乗車の都合で筆者の通常サイズ52より1サイズ大きいサイズでのインプレッションと言う事を述べておきます。
 
 

report:Kenji Nanba
photo:Kenji Nanba
date:12.4.28