BMCのパヴェレーサーGF01を国内最速試乗

昨年のツール・ド・フランス総合優勝で勢いに乗るスイスのBMCから、流行のパヴェレーサーがデビューした。サブネームにグランフォンド(長距離系ライディングイベントの名前)の名前を冠したBMC GF01である。
GF01の目指した所はその名前の通り超長距離での快適性とレースパフォーマンスの両立。既に先日開催されたパリルーベ2012にもGF01は実戦投入されており、3位に食い込む実績でパフォーマンスは証明済みだ。

レーシングバイク同様の捻れ剛性を確保しつつ垂直方向への突き上げを低減させたGF01。アメリカで着実に勢力を伸ばしているBMCが北米ではハイエンドバイクで50%を超える勢いのシェアにまで育ったパヴェレーサーに参戦しない理由はない。
まず、見た目から言ってGF01は文句無しにカッコいい。快適性の向上のためにベンドフォークやジェル素材等を投入しがちなパヴェレーサーにあって、GF01は角張ったフォークや角断面チューブ、IMPEC譲りの後三角デザインなどでパヴェレーサーっぽい弱さを見事に排除して来た。ヌードカラーにストライプの入ったグラフィックも競技機材としての主張があって美しいと言える。

フレーム重量は995gでパヴェレーサーの標準的な重量よりも若干だが軽い。SLR01同様の捻れ剛性を手に入れるために極太化されたダウンチューブはフルカーボンのBB86規格のボトムブラケットと組み合わされる。ジオメトリー自体も当然ロングディスタンスに適した快適性の高いジオメトリーでSLR01比でフロントフォーク、シートチューブが若干寝かされると同時にリアセンターの距離が伸びており当然BBドロップも若干下げられている。

先にも述べたがGF01が上手いのはこのエンデュランスジオメトリーのデザイン上の処理の仕方で、例えばリアセンターとBBドロップについてはリアアクスル周辺のフレーム形状処理で上手く隠しているし、上下に伸びた上に寝ているヘッドチューブや、レイクが長くとられたフォークなども上手く処理している。この辺りのデザイン力の巧みさは流石BMCと言った所。

ジオメトリー面以外での衝撃吸収性能の考え方は、捻れ剛性、横剛性をダウンチューブとチェーンステーの剛性管理で上手くカバーしつつ、フレームの上半分、つまりシートステーとトップチューブ、そしてシートステイとシートピラーの構造とカーボンレイアップで衝撃吸収性を担保している。TCC(Tuned Compliance Concept)と名付けられたレイアップの工夫、つまり異なるグレードのカーボンをフレーム形状にあわせて貼って行く成型や、飛び出したリアエンド部がピボットとなってシートステイがしなる構造などにより快適性を向上しているという。具体的には、垂直方向に1000NMの力が加わった際の変形量は20mmで、SLR01比で40%増えているという。
標準装着のタイヤサイズは28Cで、アルテグラDi2が標準装備される点(アメリカ仕様)などから、長距離に的を絞ったGF01のキャラクターが見て取れるが、果たしてBMC初のパヴェレーサーは乗るとどういうバイクなのであろうか?

小笠原崇裕によるプロレーサー視点でのインプレッション

どうしてもドマーネ、ルーべと比べてどうか?という対比になってしまう。見た目は各社のパヴェレーサー系で使われているダウンチューブを太くし、シートステーを細くするというものになっているが、GF01はこの傾向が極めて強い。ペダルを踏み込むと「ボヤ〜」とした低反発枕を踏んだ時のような踏み応えが返ってきた。

BMCは過剰剛性を嫌う考えなのだろうか、インペックもSLR01もバネ感を大切にし、ペダリングの際の引き足に重点を置いているように感じ、この考え方は個人的には好きだが、このGF01はインペック等の踏み心地とは違い、言葉は悪いが「サードグレードの鈍い反応」といった感触。ドマーネはペダルを踏んだ力に対し踏んだ分だけスススッと進むのに対し、GF01は踏んだ瞬間に若干の溜めがボヤ〜とあった後に踏んだ力が2割減されて進んで行く感じがした。

インペックではボヤ〜という溜めが無く、BBが捩れながらもバイクが進んでいる感触が十分にあるのに対し、GF01はボヤ〜の時にただBB周辺が捩れるだけでバイクが進んでいるという感触が乏しく、この為に鈍い反応と感じてしまった。各メーカーのサードグレードになるとトップグレードとの差を付けるために「わざと」走りを重くするような工夫を施すが、GF01はパヴェレーサーとして作られたのでその必要は無いはずだ。パヴェレーサーといえどトップグレードと同等の反応性を持たせつつ乗り心地が良いという二兎を追う事が必要なバイクで、鈍い反応性はライバルであろうドマーネ、ルーべに一歩後れを取っている。

振動吸収性においても明確なものが見えてこなかった、アメリカのガタガタとした荒い舗装ではしっかりと振動を伝えてきた。荒れた舗装の「ビリビリビリ」とした周波の短い振動を拾って欲しいのだが、快適と言えるまでの振動の収束は見せず、他の高剛性バイクと比べれば良いといった感触。ひょっとしたらインペックの方が乗り心地が良いのかも・・と一瞬思ってしまった。

盛り上がったマンホールを乗り越えるような大きな振動にも普通のロードのような振動が伝わってきた、衝撃の角は取れて丸まっているものの、これはカーボンバイクなら大概は同じだろう。カデル・エヴァンスのツール優勝を筆頭にロードでもMTBでも大活躍中のBMCが誕生させたGF01はインペックと同等かそれ以上の「良いな」と感じさせるバイクであろうと想像していただけに肩透かしを食らってしまった。ひょっとしたら、200キロ以上を走った際に違いが現れてくるのかもしれない。

今回のインプレションでは30分程しか走っていないのでGF01の素性が現れる前だったのかもしれないが、正直な所、200キロ乗らなきゃ判らないのでは多くのライダーが判らないだろう。今後はこのパヴェレーサーのジャンルが幅を利かせてくるであろうが、反応性に振るか、吸収性に振るか、各社の思想が現れるので非常に楽しみである。今回のGF01は、ライダーの反応を見るというテスト的なものであったと思いたい。次ぎのパヴェレーサーでは目から鱗になるバイクを期待している。

難波ケンジによるジャーナリスト視点でのインプレッション

プロ目線のインプレでは中々厳しい意見が出ているが、一般サイクリスト目線で見るとGF01はまさに名前の通りグランフォンドなバイクだ。もの凄くカッコいい見た目からルーベSL3の様なシャキっとした走りを勝手に想像していたが、GF01は全然違う。一言で言ってもう少し大人のバイク。大人しいバイクではなく、大人のバイク。オリャオリャっとダンシングしてトルクをかけて行く走りよりも、フレーム剛性面の作りでは綺麗にトルクを掛けつつ回して行く走りに向いている。粘りのバイク。もちろん28Cタイヤが装着されているのもその理由だ。

衝撃吸収性に関しては、正直言ってアメリカ系の競合とは狙っているポイントが違う感じがした。50km/hを超える様なスピードで橋の継目段差を乗り越えた様な衝撃にこそ真価を発揮する衝撃吸収性。その辺りの強い入力に関しては、体全体をバネにして受け止めないと奥歯や腰にズドンと衝撃が来そうなものだが、そういう衝撃をリーフスプリングのサスペンションで受け止める様な振動吸収性を示す。一発大きな衝撃が入ったときの振幅が大きいと言えば解り易いかもしれない。見た目からも解る通り、90年代前半のキャノンデールみたいに出っ張ったリアエンドと扁平シートステイが見た目通りの働きをしている事が体で感じられる。

下りのハンドリングに関してはもの凄く良い。28Cタイヤを装着しているのに腰砕けのない走り。前後の剛性バランスも素晴らしく、際立った個性はないものの文句無しにニュートラルで曲がり易く、かつ安心。直線のハイスピードも安定。

また、チェーンキャッチャーや、Di2ケーブル関係の内蔵方法などは既存のフレームの中でもトップレベルに美しくまとまっている。

個人的には100km、150km程度で楽に走りたいとか速く走りたいのであれば別にGF01を選ばなくても、値段も大差ない様なのでSLR01を選んだ方が良いと思う。ではこのバイクは一体誰のためにあるのか?これぞ、東京ー糸魚川のようなルートでタイムを出したい人、つまり大人な走りのブルベレーサーと言えよう。ちょっと玄人向けなバイクではあるが、名前の通りと言えばその通りである。
 
 

report:Kenji Nanba
photo:Kenji Nanba
date:12.5.2