5分で読めるCannondale 2013注目モデル斜め乗り・後編

「5分で読めるCannondale 2013注目モデル斜め乗り」特集後編は、CAAD 8、CAAD 10、JEKYLL、TRIGGER、SCALPEL 29ER、Hooliganのインプレッションでお届けします。

難波- さて後半戦だけど、まずCAAD10、CAAD8についてはどうだろう?

小笠原- CAAD10については、今更語るまでもないし、以前に「鉄・アルミ・チタン」の時にもしっかり乗っているが、今回ちょっと乗ってみてもやっぱり良い。フラッグシップのカーボンバイク程、走りが軽くて、掛かりが良くて、振動吸収性も良いというと嘘になるけど、同価格帯のカーボンより走るよ、足があれば勝負出来る性能なのは紛れもない事実。味わいの深さという点を除いては、改めて乗っても完成度は非常に高い。

難波- グラフィックと細かいアッセンブル以外は去年のモデルと特に変わっていないが、前にも言ったがBLACK Inc.の実物は本当にカッコいい。


小笠原- 買う?

難波- 余裕があれば、アルミレーサーの集大成として乗る用とスペアと博物館用で3台欲しい。

小笠原- CAAD10の締めは、アルミ最高峰のフレーズが気に入ったなら迷わず買って良し。

難波- CAAD8は?

小笠原- CAAD10に乗って欲しい。

難波- じゃなくて、CAAD8のインプレッション。

小笠原- CAAD10と横並びに乗り換えて乗ったので、全面的にCAAD10の方が上という結論しか出てこない。パーツが同じだとしてもフレーム自体が全く違い、特に足に来るというより、内蔵を突き上げられるような乗り心地が、CAAD10を格上に感じさせる。なのでCAAD8 TIAGRAの購入を考えるなら、CAAD10の105仕様なら少し頑張れば買えるので乗り比べて、後悔しない結論を自分で決めて欲しい。が、CAAD10に乗った後にCAAD8に乗ったらCAAD8は頭から消えると思う。

難波- CAAD8の名誉のために言っておくと、それ単体で競合のライバル車と比べるとむしろ走るバイクの部類に入ると思う。ただし、フレームが剛性云々ではなくて乗り心地の処理はもう一工夫出来る。

小笠原- なので乗り比べた上で、自分で決めて欲しい。逆に言うと、CAAD10はこのクラスでアルミを買うならそれだけお勧め出来るという事だ。

難波- 次はJekyllについて。150mmトラベルのカーボンフレームの26インチオールマウンテンだが、DYAD(ダイアードと読む)というエアチャンバーと油圧回路がそれぞれ2つずつあるFOXと共同開発のユニットが付いていて、150mmと90mmのトラベルに手元のスイッチで可変しつつジオメトリーも変化するバイク。お家芸のレフティは装備されない。

小笠原- 昔ダウンヒルレースやっていた身としてどう思った?

難波- ダウンヒル性能に関しては150mmでこの車重を考えると100点。今更比べるのが間違っていると言われるかもしれないけど、大昔にレースやってた頃に乗っていたCannondale Super V DH-Active(当時の世界最高峰レーサー)より、コッチの方が全然走るし、懐が深い。あと、バイクの中心付近の剛性が非常に高い。それなのに普通に登るし当時のクロカンバイク級に軽い。正直言って想像していたよりも遥かに万能度合いが高い。

小笠原- 確かにフレーム剛性バランスについては、セドリック・グラシア達がキャノンデールに所属してた頃に相当意見を言ってキャノンデールに開発させた経緯があるので、下り系の人が乗っても、うーんと唸る仕上がりになっている。一方でJEKYLLのダウンヒル性能を日本の里山で本気で使ったら、自分が怪我するか他人に迷惑を掛ける恐れがある。

難波- 確かに里山のトレイルでこれを全開にすると危険な域に達する。かといってクローズドコースのメッカ、富士見のA・Bではもう少しストロークのあるバイクが欲しいし、Cだとここまで要らない。

小笠原- キャノンデールに限った話じゃないけど、150mm系のバイクは日本では使う所が非常に限られてしまう。他のメーカーも良いバイクを揃えてるんだけど、残念ながらフィールドが本当に少ない。日本にコロラドかスイスアルプスのようなトレイルが無い事が本当に残念だ。僕らみたいな自転車本来の性能を追求する者には合わないかもしれないが、もう少し大人な人で余裕を持ってトレイルを走りたいというのならJEKYLLは良い選択肢になるだろう。個人的には、今回乗って驚いたのはむしろ弟分のストローク量のTRIGGER。



難波- こっちはカーボンフレームに120mmと70mmで、26インチホイール、オールニューLEFTYを装備している。

小笠原- JEKYLLでも十分登るが、TRIGGERはクロカンレースでも使えるぐらい登る。ダウンヒル性能も十二分。ハンドリングもすこぶるいい。試乗車にはDYADがついていたけど、個人的には要らないと思った。120mmで十分登るし、70mmに変更した時のジオメトリーよりも120mmの方が踏んでいて登る感じがした。

難波- その辺りをキャノンデールジャパンが理解しているのか、日本導入仕様はDYADが装備されていない。10万円ぐらい払えば後から装着出来るらしいけど。TRIGGERに装着されているALL-NEW LEFTYはどう?

小笠原- 一言で言って、これは良かった。

難波- 具体的にはどんな風に?

小笠原- ちょっと詳しく語りたい。新型の構造自体はキャノンデールサイトなり他で学んでから読んで欲しい。インナーチューブとベアリングの接触面をスクエアにして、ねじれ剛性、それからストロークして行った時のたわみ剛性を向上したとキャノンデールは言っているが、事実劇的に向上している。
従来のLEFTYって、どのレーサーもエアユニットのエア圧を低めで走っていたんだけど、それにはちょっとした理由があって、剛性が足りないからサグを取らない程度の圧で走るとロウワーレッグがたわんじゃってそれが引っかかって突然サスの動きが渋くなったりして、ウォッシュボードとドロップオフが連続するような所を走ると突然サスがロックして、ストロークしてくれずにハイ終了。という事があった。倒立なのでストロークして行った先はアウターレッグとインナーレッグが被っていくのである意味ストロークしていない状態の倍の剛性が出るが、初期の細かなう動きを出そうとすると低圧のスコスコにして、初期で突っ張らないようにしてやらないといけなかった。
新型はその必要がない。なので、LEFTYなのに普通のサスと同じ感覚で走れる。本当に本当にごく最初の動き出しに、風船を針で突っついて割るような突っ張りがあるのが気になるといえば気になるが、今回はほぼ全種類のニューLEFTYに乗って、カーボンアウターレッグのものは、その突っ張り分の入力をカーボンが吸収しているのか、そっちの方が気にならなかった。
あとは、メンテナンス頻度が100時間、オープンオイルバスになって、ベアリングリセットの必要がなくなったのもアマチュアレーサーやトレイルライダーには朗報だろう。

難波- べた褒めですな。あと、LEFTY以前にHEADSHOK時代から考えても初めてニードルベアリングのゴリゴリを感じさせないスムーズな動きを手に入れた点も評価したい。素直にクラウン付きの正立フォークで良いんじゃ?という所を、ここまで諦めずに頑張って来たキャノンデールに尊敬。

小笠原- SLICE RSと同じく「ブレてない」。あとは、大きな不満は29インチバイクでのステム選びの問題だけだろう。

難波- 話変わって、Hooliganはオガも乗ったんだっけ?

小笠原- 乗った。

難波- 思っていたバイクとは全然違った。小径なのもあって全体がゴチッと一塊に固い。特にLEFTYフォーク。

小笠原- あれは固過ぎ。舗装の継ぎ目が何度もあって手が痛くなった。

難波- キャノンデールとしても新宿→原宿みたいな5km圏内の都市内移動しか考えていないだろうから、あれはあれでクイックで良いのかもしれない。内装変速機のバイクって走りが怠かったりするけど、フレームが固いのでシャキシャキ走る。

小笠原- 10km以上の距離は素直にクロスバイクなりMTBなりロードレーサーなりに乗りたい。あくまでちょっとした用事のストリート用。

難波- 今の自分の通勤距離が18kmだけど、確かにHooliganでは通いたくない。とはいえ近所をブラブラするのは、カッコいいし、一台欲しいぐらい。

小笠原- デルタVフレーム(トップチューブのV字形状の事)っていうのが泣かせる。

難波- アリソン・サイダーとか、マイルス・ロックウェルとか思い出して?

小笠原- そう。青春そのもの。(涙)

難波- 往年のファンもデザインファナティックも同時に泣かせる商品企画力は脱帽。90年代のVOLVO黄金期があるブランドだから出来るネタな上にスタンドオーバーハイトが低くて剛性も高いという実用性もあるので、他のメーカーはちょっと嫉妬しちゃうんじゃないかな?

小笠原- 最後にスカルペル29er。難波さん、最後になって夕日が暮れかけるまで乗らなかったよね?なんで?

難波- 正直に言って26インチのスカルペルの大ファンだった。文句無しに美しかったので。で、29erが出るって聞いた時に、26のデザインを踏襲したのが出ると思ってたら、出て来たのがあれだったのでお世辞にも美しいとは言えず、もはや眼中に無かった所を他の試乗した人達に奨められて日が暮れかけてから乗った。なので写真が日が傾いている。

小笠原- 2012モデルとして発表されたけど製造が遅れて結局2012モデルで売る事は無かったと聞く。なのである意味これが最初。乗らなきゃダメでしょ。キャノンデールに失礼でしょ。で、印象は?

難波- 10台の中で一番良かったというか衝撃を受けた。目から鱗が落ちた。

小笠原- その心は?

難波- 乗り始めた瞬間にある事を忘れて乗っていた。

小笠原- 何?

難波- 29er。29インチ。29フルサスらしいモッサリ感が皆無。シャキシャキでパキッと加速する。パッと見の見た目と裏腹にコレは、リアルレーシングバイク。それでいて、他の点では完璧に29erのフルサス。これには本当に驚いた。正確にはしばらく乗ってシングルトラックに入ってからコーナリングしたらよく考えたら29erフルサスじゃんというのを思い出して驚いた。そして、降りて改めてバイクを見たらこれ、カッコいいというか理詰めでキャノンデールが29erフルサス作ったらこういう形になるよなーっていうのに気がついた。

小笠原- アバタモエクボ。

難波- 惚れた。

小笠原- 正直、私もスカルペル29erには惚れた。今までいろんな29erフルサスを多くの雑誌のインプレで乗って来たけど、正直どれもあと一歩で心の琴線に触れるものは無かったが、ようやく見つけた、というかようやくそういう時代に入ったか。と初めて実感させてくれた。

難波- だから、エクステラジャパンで使ってた訳?

小笠原- そう。丁度試乗した時が、エクステラ日本選手権で何に乗ろうかなー?と考えている時で、たまたま乗ったスカルペル29erが本当に良かったので、日本にあるMサイズは試乗したの1台しかないとかだったけど、キャノンデールジャパンにローリング土下座して貸してもらった。
エクステラ日本選手権だけは5連覇しているのでプロとして負ける訳にはいけない。例え大金を積まれても勝てないバイクには乗らない。

難波- で、ファクトリーライダーの山本カズを差し置いて、スカルペル29erをレースに投入した訳だ。

小笠原- ちなみに言うと、その結果、勝った。しかも日本選手権だけじゃなくて、海外招待組の選手を含めて初めてエクステラチャンピオンシップを総合1位で勝てた。

難波- アゲバイク!

小笠原- そういう経緯があるので、スカルペル29erの詳しいインプレについては、ここじゃなくて、実戦・トレイルでしっかり走ったインプレとして長期インプレとして掲載したい。

難波- デザインに関しては、平面の写真で見ると格好悪いけど、実物はSLICE RS同様にモード系。むしろこっちは、ヘッド周りの局部剛性上げるためにヘッド周りのチューブを連結させて、チェーンステイを短くするためにダイレクトマウントのFDにした上でシートチューブを湾曲させて、さらにリアバックの剛性を出すためにスルーアクスルにした上で極太スイングアームで・・・と、乗った後にバイクを見るとエンジニアとデザイナーの苦労の後が手に取るように解る。機能のためのデザインをキャノンデール流にアレンジしたらこうなりました。という形状は、見慣れてくるとモード系。

小笠原- 同感。ある意味デザインレベルが高すぎるので、我々のようなデザイン初心者にはパッと見では「ナメクジか?」とギョッとさせられるだけで見慣れてこないと格好良く見えない。言うならば、サイクルモードUSA。(笑)

難波- 最後にスカルペル29erについてはインプレ先延ばしになったけど、2013キャノンデールをまとめつつ、今年の1台を選ぶなら?あ、スカルペルは自分が選ぶんで無しね。

小笠原- んー、とするとTRIGGERかSLICE RSか。レースからトレイルまで何でも一台でこなせる万能性を高いレベルで両立させてて、しかも楽しいって言う所で、TRIGGERかな。
で、2013モデルのキャノンデールを総括するなら、もう一回、中村浩一郎さんの言葉を拝借して、「ブレてない」。以上。

難波- 確かにブレてない。


 
 

参考:
5分で読めるCannondale 2013注目モデル斜め乗り・前編
「鉄・アルミ・チタン」特集

Talk:Kenji Nanba,小笠原崇裕(まとめ:Kenji Nanba)
Photo:The Bike Journal
date:12.10.11