STORCK AERO2is vol.2

他のストークのバイクと違ってゴッチゴチの硬い踏み心地と乗り味は僅かながら鳴りを潜め、幾分マイルドな印象が与えられているエアロ2is。
他社のTTバイクも同じく高剛性を全面に押し出している味付けではなくどちらかというとエアロ効果を押し出しているが、このエアロ2isも同じくエアロ効果を一番に考えて作り出されたものだと最初の1踏み目で気が付いた。それでもTTバイクの中では足に伝わってくる硬さはかなり硬い部類に入るだろうし、実際にシャキシャキしたペダリングフィールが生まれているのもこの剛性から来ている。

このシャキシャキしたペダリングフィールのお陰で見た目のボリュームからは想像できないほどにヒルクライムでもモッサリした重さが無く、ケイデンス高目のペダリングでも反応良く登ってくれる。ゼロスタートの加速はロードレーサーのような軽快感は無いもののハンドルポジションの低さとフレーム自体の風の抵抗の低さで時速30キロを超えた辺りからの伸びはロードレーサーでは感じられないような前に引っ張られて行くような伸び方をする。

もちろん高剛性なフレームを加速させているので筋力はそれなりに必要で、非力なライダーではダンシングでの加速は何十回も繰り返すことは辛いかもしれない。グググググッと伸びて行った先の巡航は、さすが変態ともいえる作り込みで生まれたエアロ効果が発揮された。

前面からの風ではバイク自体が受けている風の抵抗の感じが極端に少ない、風抜けがいいというよりも受け流しているような感覚で波に乗ったサーフボードのように風に逆らっている感じではなく常に風の隙間隙間に入り込んで行っているような感じだ。

何とも形容し難い感覚だが、これがエアロ効果か!?と一人でほくそ笑んでしまった。ペダルを踏めば踏むほどにスピードが上がって行くので自制をしないと早々に潰れてしまう可能性を持っている事を注意しておきたい。

その一方で横風には弱かった。シートチューブの厚みがモロに風を受けるのか特に後輪が煽られる感じが強く出てしまい、少しでも緩和させようと無駄だと解っていてもサドルの座る位置を何度も直してしまった。前面からの風の抵抗とのバランスが極端に違いすぎて、これはこれで強烈な個性として
みれば面白い。

セットされているステムとブルホーンバーとDHバーの一体型のハンドルは全くしなりの無いほどに硬いもので、極太なフォークと相まってフロント周辺の塊感は物凄い。ゼロスタートからダッシュで加速してハンドルを思いっ切り押したり引いたりしても少しもしならない。

すべてが高剛性でゴッチゴチに作られている割には身体破壊マシンかのような激しい衝撃が伝わってこないのはカーボン素材の成せる技なのだろうか、路面の継ぎ接ぎやマンホールを乗り越えてもバイク上で身体が跳ねて乗っているポジションが変わってしまう事が少なかった。

ペダルから足に戻ってくる硬さは相当なものだが、乗り心地はそれほどハードではない、この相反する事を上手く作り上げているのは、いち早くカーボンに着手して開発をしてきた経験の蓄積がなせる技だろう。このバイクはプロやそれに近いバイクをしっかりと扱えるライダーを視野に入れて作られているのだろう、走りそのものもそうだがメンテナンスをしてみるとその複雑さと、パーツ選択の幅や限定されるポジションフィットがある。

メンテナンスはハッキリ言って面倒というか、並のメカニックではベストな状態を出すことが出来ない。フネまでカーボンで一体のブレーキはトーインが出せないし、左右の動き、幅の調整も出来ないのでブレーキの片方がダンシングするとリムに擦ってしまった。ワイヤー一つ留めるにしても小さなイモネジを小さな穴に合わせてアーレンキーを入れて締めるので太いリムではネジを締められるか不明だ。

限定されるポジションというのはDi2のバッテリーがシートポストの裏側にあるので、バッテリー分はシートポストを出さないといけない点だ。170センチの私が一番小さいサイズの47に乗ってシートポストは一番下のバッテリーが当たるまで下げてちょうど良かった。ちなみにBBセンターからサドルトップが68センチ。

もうこれだけでも乗れるライダーが限定されてきてしまうが、これも速さを求める為の取捨選択であって、決してネガティブな部分でないと思う。
一方を立てるために一方を捨てるこの割り切り方はバイクに個性を求めたり、攻撃的なスタイルで走るライダーには打って付けだろう。

やはりこういった究極の部類に入るバイクは何かしらの強烈なメッセージが刷り込まれている、マーカス・ストークが「速さ」を第一義に考えて作り出したらこうなったってのがエアロ2is。なかなかお目にかかることが少ないであろうバイクだが、目にした際は是非隅々までマーカス・ストークの魂を探して欲しい。


 
 

report:小笠原崇裕
photo:The Bike Journal
date:12.10.26