「MERIDA 2013注目モデル斜め乗り」特集 vol.4

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難波 - はい、では皆さんご期待のロード行ってみましょう。ランプレ・メリダ。

小笠原 - 国内で一番最初にその噂を報じたのは難波さんだったと思う。

難波 - 3月売りのサイスポで。噂というか、本国の副社長から直接聞いたんだから噂じゃなくて計画中の話を述べただけだけど、結局現実のものになった。

小笠原 - あれ、あのタイミングで書いて良かったの?

難波 - 許可を得て取材しております。そのランプレ・メリダが使うニューバイクがお披露目された。SCULTURA SL。

小笠原 - マウンテンバイクでこれだけの成功を10年間積み上げて来たんだから、このタイミングでツールを含むプロツアーレースに参入っていうのは順当な路線でしょう。

難波 - 順当と言うか、機が熟したというか。ロードだって決して目立たなかったけどずーっと作り続けて来たわけでそのノウハウの貯まり具合たるや、なぜ今までプロツアーに参戦していなかったのかというレベル。今にして考えると3年前にREACTO(リアクト)を出して来た時から、ツール参戦の狼煙がすでに上がっていたと言える。

小笠原 - それまでは地味にロードも作り続けてきました。というブランドだったのにREACTO発表のタイミングから急に時代の最先端にやってきた。今日流行りまくっているエアロロードはあの時点では、結構早いタイミングでの参入だったからね。

難波 - それまでは流行を2年遅れで追いかけていて、決してリードしようという意欲的な作品はMERIDAは特に出してこなかった。

小笠原 - マウンテンでは時代の最先端を行くバイクを提案して来ただけに、REACTOの登場は個人的にも興味を持って見て来た。

難波 - そのREACTOも13年モデルでは、シートピラーにモノリンクを採用してアップデートして来たけど、9070Di2がまだ完成していないので残念ながら試乗車はなかった。ということで、今回試乗したのは13年モデルで新登場したSCULTURA SL(スクルトゥーラSL)。

小笠原 - まずはどういうバイクなのか簡潔に説明してよ。春先にスペインの発表会行ってたんだから。

難波 - SCULTURA SLは単刀直入に言うと、GCバイク(=ツールやジロでの総合優勝、総合順位を狙うレーシングバイク。General Classification Bikeの略)。直接比較のライバルで発表会のプレゼンで登場して来たのは、CannondaleのEVO、スペシャライズドのTARMAC SL4、CerveloのR5CA、GIANT TCR Advancedなど。

(発表会の様子)
小笠原 - まあ、ツールで走るって言ってるんだから当然のライバルですね。

難波 - そんな競合と比較して、どう言う所に突っ込んでSCULTURA SLは開発されたのか。

小笠原 - ふむ。

難波 - エンジニア曰く、ライバルの800g、700gを切るフレームのバイクに果たして意味があるのか?という所だった。

小笠原 - MTBであれだけ軽いフレームが作れるんだから、MERIDAの手に掛かれば作ろうと思えば700g台のフレームセットなど余裕の話でしょう。

難波 - まず話題に上がったのはUCIルール。

小笠原 - ルールの方がオカシイと言う話もあるけど、今のフレームで組んだらどうやったってフラッグシップのパーツ付けたら6.8kgを普通に下回ってしまう。

難波 - だからSRMつけてみたり、鉛のウェイトを400gも500gもつけたりして、6.8kgに持って行っている。

小笠原 - でSCULTURAのSLの重量は?

難波 - 56サイズ、ペイント済みで844g。

小笠原 - 普通に超軽量じゃん。

難波 - とは言えサーベロのR5CAに比べると実測で「80g」重い。

小笠原 - MERIDAのエンジニアとしては、その80gをサーベロより「重い」と言われたくなかったと。

難波 - なんで80g重いのかと言うと、食物繊維由来のバイオファイバーをリアバックのレイアップに加えているから。これで60g程重量が増えるらしいけど、振動吸収性は格段に高くなるらしい。単に、重量だけ見せて、なんだ80g重いじゃん。とは言われたくなかったから最初にそういう事を言ったんだと思う。

小笠原 - 鉛をつけるぐらいなら、どう考えても乗り心地が良い方が良いでしょう。と言うのは現状のルールを考えると理にかなっている。

難波 - 次にチーフエンジニアが言っていたのが、デザイン。限界まで重量を削ったフレームがカッコいいですか?と言う事だった。

小笠原 - 超軽量フレームは確かにデザインの余地がなくなっているのは事実。まあ、昔からロードレーサーは丸チューブをつないだだけのモノだって言う話もあるけど、それでもクラウンの造形などでデザインを追求していた。

難波 - 20gの重量の代わりにSCULTURAが得たのがSCULTURA(ラテン語で彫刻の意)の名前が示す彫刻的な造形と、ちょっとだけエアロ。

小笠原 - 確かにヘッド周りの切り返しの造形とリアエンドの造形は意欲的だと思っていましたがそういう事でしたか。少なくとも先代、先々代のSCULTURAと比べて、急にデザインが垢抜けた。

難波 - 100%の機能美よりも、彫刻的な美しさをプラスしたという考えらしい。

小笠原 - どうせ鉛を積むんだったら、バイクはカッコいい方がいいという考えは解らんでもない。

難波 - 実際にデザイナーも変わっていて、彫刻的なデザインを実現するために彫刻を大学の美術科で学んだMARTIN STUETZというインダストリアルデザイナーにデザインさせたとか。デザイン手法も従来の自転車の設計ソフトではなくて、3DモデリングソフトのALIASを使いつつクレイモデルを削ったりして、あーでもないこうでもないと彫刻的に考えて行ったらしい。その上でFEA解析して最適な形状との折り合いをつけて。

小笠原 - その上で、新規格も盛れるだけ盛り込んでの844gとエンジニア氏は言いたかったんですな。

難波 - その辺も解った上で、ウチには作ろうと思えばサーベロより軽いバイクは作れるけど、それより良いバイクの作り方を知っているからこう作ったんですよ。と言いたげだった。

小笠原 - 新製品のプレゼンテーションなんだから自分が負けてますとは絶対に言わないでしょう。

難波 - で、MERIDA独自のカーボンチューブ内にリブを設ける設計手法などは踏襲されていて、軽量化と高剛性の追求にはもちろん余念はない。少なくとも、TOURマガジン(マニアックなテストで知られるドイツの雑誌)のBB剛性テストでは最高レベル(正確にはR5CAよりも評価値は1ポイント低い)の横剛性、ねじれ剛性を持っていると評価されたとエンジニア氏は言っていた。

(ダウンチューブ内にリブが入っている)

小笠原 - 標準でDi2対応してるのもいいけど、BB386EVOの採用は評価出来る。

難波 - フレームセットで買っても、残念なカタチのアダプターを挟まずにクランクの規格を色々選ぶ余地があるのは確かにいい。でも結局の所は乗ってどうなのか。前口上はこのくらいにしてインプレ行ってみましょうか。

小笠原 - まずはフラッグシップのSCULTURA SL。乗るとですねー。

難波 - 乗ると?

小笠原 - さっきのBIG.NINEでも言ったけど、振動がビリビリゴツゴツ来ない。これには驚いた。
重量的な軽さも、走りの踏み出しの軽さも、今日日のメジャーブランドのトップモデルのGCバイクならどれも不満のないレベルに仕上がっている。その中で比べてどうかと言われると、SCULTURA SLはビリビリ来ない快適さや乗り心地と踏み出しの軽さのバランスがものすごいハイレベルで両立出来ている。これがバイオファイバーの効果かと。REACTOにもバイオファイバーは使われてたけど、そういう次元じゃない1レベル上に行った快適性を見せてくれる。
で、乗り心地の良さで考えると、その世界では横綱級のSPECIALIZEDのルーベSL4やTREKのドマーネと比べるとと聞かれると、そこまではまでは行ってないかな。

難波 - アスファルト自体のビリビリ感の吸収に関しては相当高いレベルに来ていると思う。確かに、ドスンと路面の穴やデコボコを越えた時の吸収性は全然違うけど、日本の舗装路はそんなにひび割れたりしていないので。

小笠原 - 個人的には、スクルトゥーラSLがいいなと思うのは、最近は快適系レーシングバイクが増えて来てその走りとかヒルクライム性能にも不満が無くなって来てるんだけど、快適に振るにあたってジオメトリーまで快適性に振って来てるでしょ。個人的にはジオメトリーはレースジオメトリーのままで良いので快適性を高めたバイクが好きだ。なのでそこがスクルトゥーラはいいなと思う。
キャノンデールのEVOは快適性自体を表立って謳ってはいないけど、あれもかなり快適。それでいてジオメトリーは完璧にレーシングバイク。方向性はEVOに近いけど、快適性はコッチの方が上。ハンドリングはあっちの方が上。

難波 - SCULTURAはヒラヒラ登るし、ダウンヒルでのフレーム剛性にも不満ない。一方で下りのコーナリングではフォークの特に下の方はもうちょっとだけ剛性が欲しいかなと思った。

小笠原 - 確かにコーナリングでは、他のフラッグシップバイクと比べるとオンザレール感には欠ける。初心者はあれを怖いと感じる人も居るかもしれないけど、上級者ならそこを使いこなして行ってこそでしょう。癖はあるけどコーナリングスピード自体は速い。

難波 - 実際、撮影中もそんなに倒しちゃうのというぐらい攻め込んでいた。(注:クローズドコースで撮影しています。撮影許可を得て撮影しています。)

小笠原 - フレーム自体の素性とか安定感はいいので上級者が攻め込んで行けば、そこはコントロールしきれる。そういうハンドリングにはなっている。ただし、アッセンブルにはちょっと言いたい事がある。ホイールが標準スペックのDTのホイールは走りは軽いんだけど、色々ホイールを付け替えて走ってみた感想では、DT SWISSのこれよりもR-SYSとかみたいなしっかりした横剛性、回転方向の剛性があるホイールの方が、踏み味もハンドリングもしっかり感が出る。

難波 - なるほど。

小笠原 - 単純にヒルクライム性能がナンボで、スプリント性能がどうで、BBの剛性が。と言い出したら他に似たような性能のバイクが20とある。その中でスクルトゥーラは何なのかというと乗り心地とジオメトリーのバランスだろう。

難波 - 話は変わるけど、MERIDAのパヴェバイク、そして、新型のTTバイクが年明けに発表される事は既に公表されている。

小笠原 - 更にパヴェモデルが出るの??それ、要らなくない??

難波 - ランプレなので、欧州クラシックレースにもガチンコで勝負しにいくだろうから、その辺もあってチームからよこせと言われたのではないかと思う。販売面でも好調のベネルクス3国で開催されるレースが多数ある訳だし。

小笠原 - あとは、日本でヨーロッパでと考えると「今」、今の今、MERIDAのロード、それもスクルトゥーラSLに乗ってると言うのが、解ってる感が出るのもいいよね。

難波 - 解ってない人には全然全く解られないんだけど、バシッとポジションも出して乗ってると玄人には「あー、解ってんなー」となるかもしれない。

小笠原 - 3年ぐらいすると我々の想像を超えるペースで繁殖してしまって全然解ってる感がなくなっちゃうかもしれないけど、この冬、次の夏で言うとかなり解ってる感が出ると思う。

難波 - トレンド、ファッション的にバイクを捉えると「旬」も大事かと。10年経っても言われますからね。あの頃、あれ乗ってたよねー。と。

難波 - ついでにどうぞと言う事で、安いグレードのSCULTURA EVO 903に乗ってみた。THE BIKE JOURNALは知っての通りエントリー・ミドルグレードは取り上げないんだけど、このバイクについては一言言っておきたい。

vol.5に続く
 
 

Talk:Kenji Nanba,小笠原崇裕(まとめ:Kenji Nanba)
Photo:The Bike Journal
date:12.12.04