クリス・ホーナー、イヴァン・バッソに反論 後編

難波 ーそうして短いオフが終わり1月に入るとトレーニングキャンプが始まるのですが、その辺りでは食事、トレーニング共にどのようになっていくのでしょう?

クリス ーそのシーズンで狙っているレースがどこにあるかによってチームトレーニングキャンプでの強度は変わってくる。例えば今年の自分の場合はツアー・オブ・カルフォルニアを狙っているので、強度を上げたトレーニングや体の絞り込みを行うには1月では時期早々すぎるため非常にスロースタートだ。もちろんそれでも距離は乗るが、春のクラシックは走らないので、ここで万全のレースコンディションに持って行く必要は何もない。

難波 ーなるほど。狙っているレースの前にはどんな食事を摂っているのでしょう?

クリス ー朝、昼に関しては普段と変わらない。一方で、夕食については、狙っているレースの2ヶ月ぐらい前から炭水化物の代わりに野菜を多く摂る事で摂取カロリーをコントロールして4kg程絞り込む。この間も決して無理はしなくとも、ちゃんと練習していれば自然と体重は落ちてくる。ストレスを貯めない事は選手にとって非常に重要だ。

難波 ー睡眠、リカバリーも重要という事ですね。

クリス ー年齢も年齢なので故障も増えて来た。今は、腰と膝に違和感があるが、これについてはシーズン中、オフシーズンを問わず非常に頻繁にマッサージを受けているしストレッチも行っている。

難波 ー鍼治療は行わないのですか?

クリス ーオフシーズンは頻繁に行う。週数回のペースで鍼を入れて集中的に治療しているがオンシーズンは鍼はあまり行わない。

難波 ーポジションについてはどうでしょう?

クリス ーポジションはいつも変わる。特にサドル高は毎朝調整するね。

難波 ーそのココロは?

クリス ー体調によって体の固さが変わるだろう。クルマのミラーを体調によって調整するのと同じでその日の体の固さによってサドル高も変えた方が良い。とは言っても調整の範囲は非常に小さい。最大で上下7mm程度の範囲内だ。大体の場合2,3mm程度の幅だね。

難波 ーハンドル高はどうですか?

クリス ー昔は低ければ低い方が良かったが、ここの所は年々高くなって行っている。笑 リーチについては、バイクが変わった時はそれに合わせて感覚で合わせている。

難波 ーバイクの見た目にはコダワリがあるとの事ですが。

クリス ー年々ハンドル高は高くなって行っているが、ステムの下にスペーサーが挟みまくってあるのはカッコいいとは思わない。なので、今、主に乗っているトレックのドマーネはヘッドチューブが長くて、ハンドル高を高くしてもスペーサーを挟む必要が少なく、腰にも優しいので実は気に入っている。

難波 ーレースには勝てても年には勝てないのですね。笑

クリス ーそういう事かな。

難波 ー日本生まれのサイクリングスーパースターとして、この先、日本人が世界で活躍するにはどうすれば良いのかアドバイスを頂けますか?

クリス ーまず、日本の選手はもっとヨーロッパに来ないといけない。特に若い選手は。

難波 ーなぜですか?

クリス ーやはりヨーロッパには自転車競技に於ける100年を超えるノウハウが詰まっていて、この知識を吸収して自分の国に持って帰らない事には日本が世界で活躍出来る様にはならないだろう。今、欧州ではアラシロやベップ達、少数の日本人選手が頑張っているのは知っているが数が少なすぎる。特に若い選手はたとえ欧州にやってきて活躍出来なくても良いから、ここに来てこの知識を持って帰って欲しい。1、2年来ただけでそのノウハウは日本での100年に値するだろう。

難波 ー他にアドバイスはありますか?

クリス ー私と平均的な日本人選手は比較的体格が似ていると思う。細身で出力もそれほど高くない。なのでワンデークラシックではなく、ステージレースを狙って行くべきだろう。屈強な体格のパワフルな選手はワンデーや1本の峠だと信じられないパワーを発揮するが、峠が2つ3つと続くとそのパワーを持続出来なくなる。体格では恵まれていないと思われがちな自分達(=平均的な日本人選手)だが、ステージレースとなると逆にそれが有利に活きてくる。パリ・ルーベやフランドルといったレースでアジア人が活躍出来る日が来るとは私は思っていないがステージレースではその可能性が高いと思っている。

難波 ークリスさんは今シーズン、どんなレースを狙って行くのですか?

クリス ーアメリカンスポンサーのチームでアメリカ人なのだから、ツアー・オブ・カルフォルニアでの優勝はマストとして狙って行きたい。チームも私の勝利のためにサポートをしてくれるだろう。ツールは日程が近すぎるのでどこまで仕事出来るか解らないが、もちろん出来る限りのアシストはしたい。

難波 ー個人的な質問というか確認ですが、クリスさんは沖縄生まれとの事ですが、実は正確な情報がどこにも載っていません。アメリカの競技連盟ではカルフォルニア生まれとなっているとの話もありますし、日本語版のwikipediaでは沖縄生まれと書いてありますが出所が不明です。この場で本当に沖縄生まれだと正式に発表(?)して頂いても良いですか?

クリス ー笑。本当に沖縄生まれだよ。父親が空軍で働いていて2歳ぐらいまでは日本で育った。今は長くオレゴンのベントに住んでいる。2歳だったので日本の記憶と言うと殆どないが、心の中ではやはり日本は第2の古里だとも思っている。日本に戻ったのはそれから丁度25年ぐらい経った頃、宇都宮のジャパンカップに出走するために行った時の事で、到着した日が誕生日だったのを鮮明に覚えているね。日本で生まれて、四半世紀後の誕生日に戻ってくるって、ちょっと運命っぽいものを感じないか?

難波 ーちなみに、日本への来日の予定はありますか?

クリス ーかれこれ10年以上日本に行っていないので久々に行きたいと思っている。ジャパン・カップやツール・ド・フランスの記念大会に誘われたら是非行きたい。故郷(?)の沖縄にも行ってみたい。日本のファンにも宜しく伝えてほしい。

難波 ー了解しました。そのまま書きます。という事で、今日はトレーニングでお疲れの所、ありがとうございました。

クリス・ホーナー
(CHRIS HORNER)
国籍:アメリカ
1971年10月23日生まれ
身長178cm
体重66kg
主な戦績:
2002-2004全米ナショナルランキング総合1位
2010バスク一周総合優勝
2010ツール・ド・フランス個人総合9位
2011ツアー・オブ・カルフォルニア総合優勝
2012ツール・ド・フランス個人総合13位
 
 

interview:Kenji Nanba
photo:The Bike Journal
date:13.3.2