3大ブランド旗艦ロードバイク徹底比較 Vol.4

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難波ー はい。キャノンデールのSUPERSIX EVO。

小笠原ー 僕自身は長期インプレ車として、かれこれ半年以上これに乗っているのでもう知り尽くしている訳ですが、やっぱり3台比べてみると新しい事が見えて来た。

難波ー 発表は11年のジロで12年モデルとしてデビューしたので、もうじき丸2年。キャノンデールのモデルスパンから言うとまだモデルとしては新型。フルモデルチェンジは勝手に予想するとまだしばらく先でしょう。

小笠原ー EVOは難波さん、グローバルローンチイベントに呼ばれてたよね。

難波ー イタリアのトリノの近くで、用意された試乗コースの峠の辛さに、世界最軽量モデルなのに蛇行した苦い思い出が・・。ヨーロッパのプレスは昔ツール・ド・フランス出てましたとか、そういうレベルが普通に居るので・・。

小笠原ー それはさておき、EVOはどんなバイクなのかというのを改めて説明してよ。

難波ー ちょっとじゃあ、そのイベントの写真を入れながら説明を。ちなみに写真は全部MY12モデルのカラーなので注意されたい。
アルミ番長として売っていたキャノンデールがフルカーボンバイクを投入したのは比較的歴史が浅くて、2005年モデルで初代Synapseがデビューしたのが最初だった。正確にはその前に、マウンテンバイクのフルサスペンションでチタン製の骨組みにカーボンモノコックを被せたレイブンっていうのがあったけど。

小笠原ー RAVENは走りはともかく、格好良かった。

難波ー エンデュランスロードはともかく、グランツール用のメインバイクは04年に発表したSIX13でアルミフレームにUDカーボンのチューブを差し込んで作ったハイブリッド型アルミカーボンがデビューして、その後07年にフロントトライアングルがフルカーボンでアルミバックを採用したSYSTEMSIXが登場。
ジロで優勝したり、バイク自体の仕上がりは悪くはなかったけど、フルカーボンを求める時代の流れには逆らえず、サクッとフルカーボンの新モデルとしてデビューして来たのが前作のSUPERSIX。これが08年の事。

小笠原ー いわゆるGCバイクでフルカーボンを出して来たのは08年と比較的新しい。

難波ー とは言え当時はキャノンデールと言えばアルミ。というイメージから脱却出来ていなかったので、販売面では期待した程の大成功と言えず、恐らく相当に悩んだキャノンデールが本気になったのが09年と10年の間だったと思う。

小笠原ー どういう作戦が?

難波ー エンジニアリングの総見直し。スコットで、CR-1とかADDICTを開発していたチーフエンジニアのペーター・デンクがキャノンデールにエンジニアリング担当役員として移籍してきて生産プロセスから何からなにまで見直した。

小笠原ー それで作り出したのが世界最軽量MTBのFlashと。本気になるとアメリカの資本力と一致団結力はどの産業でも半端ない。

難波ー そういう事。で、ペーター氏が陣頭指揮を取って開発したロードの1発目がSUPERSIX EVOという事になる。ちなみに言うと、CAAD10も同氏が担当していて、コッチの方が先に市場に出てるじゃないかという話があるけど、アルミとカーボンの開発期間の違いで、カーボンは調達ルートから生産プロセスまで全部見直したので立ち上げに時間が掛かって、先に始めていたEVOの方がCAAD10より1シーズン遅れて出たという裏話がある。

小笠原ー なるほど。

難波ー 市場の要望もあって695gっていう量産車としては当時世界最軽量のバイクを作って来たけど、ペーター氏と話すと、最軽量はあくまでオマケであって、むしろそれ以外の部分を刮目して見よ。と言いたげだったというか言っていた。

小笠原ー 1gや10gで走りが変わったら苦労しませんからね。

難波ー 軽いは軽いで嬉しいし、その努力は評価されるべき。ちなみにEVOよりサーベロのR5CAの方が公称値で1g軽いけどあれを量産車種と呼ぶのはちょっと微妙。ちなみに、EVOは塗装が入ると実際は695gより60g-80gぐらい重くなる。マドン7はシステム重量でEVOより軽いと言っているが、超軽量シートピラーとブレーキが選べるという意味ではEVOの方が実質は軽い。本当にどうでもいい話だけど、まあ、どれも同じ位軽いって事ですよ。

小笠原ー 技術的な面ではエンジニアが新しくなってどうなっているんでしょう?

難波ー 例えば、13年に入っちゃった今となっては各社採用して来ているけど、フルカーボンのドロップアウトは2年前としては斬新だったし、特に目新しかったのが、チューブとチューブのジョイントの方法で、1、2層薄く作ったチューブをチューブtoチューブでつなげて、ヘッドからリアバックまで1枚でつながったレイヤーを上と内側から被せて補強するレイアップの仕方なんかは他では聞いた事のないものだった。

ウルトラハイモジュラス層の上からミディアムモジュラス層を被せて剛性バランスを最適化していると同時に、対衝撃性でもミディアムモジュラスの方が割れにくいので向上するというメリットもある。

詳しい所は門外不出って言う事で聞いたけど公言しちゃだめと言われてる訳ですが、ひとつだけ言うと頻繁に工場に通って生産工程を革新して行くっていうやり方を聞くと、だてに名車を作って来ただけあってペーター氏はかなり真剣にバイク作りに取り組んでいる。ちなみにドイツ人なんだけど、カーボンバイク作りに関しては、アメリカ人とドイツ人のエンジニアは、話してみると他の国とはレベルがかなり違う話が飛び出してくる。

小笠原ー 難波さんは応用化学科出身だけあって、その辺は詳しいんだろうけど、熱く語られても話を聞いただけではイマイチ想像は沸かない。とはいえ、真面目に取り組んでるのと、いきなりガラリとバイクが変わった理由は良く解った。

難波ー モノ作りの裏側は色々革新的な事を取り入れてるんだけど、SUPERSIX EVOの見た目はもの凄くオーソドックス。走りを置いておいて語ると、ここが最大の特徴だと思う。

小笠原ー 3台の中でも、ずーっと自転車に乗って来ている人にはどう考えてもコレが一番カッコイイ。チューブは細身だし、何と言ってもほぼホリゾンタル。若干スローピングしてるけど、それも理由を聞くとシートポストが少し出てる方がバイクが格好良く見えるという裏もあるみたい。

難波ー バイクは自宅のリビングに保管して年中目に入るって言う事を考えたら、どう考えてもこれでしょう。SL4はガレージに置いてあったら、日本刀が置いてあるみたいな戦闘感があるけどリビングにはちょっとやり過ぎ。毎日戦闘するのかと。Madone7は、今回借りたのがスローピングがよりキツいH2FITのモノなので見た目の残念感が。。

小笠原ー 見た目へのコダワリって言うと歴史的なものとメインとしている市場からの要望が大きいんでしょう。

難波ー 今ではアメリカンブランドなんかのヨーロッパ以外の地域のブランドがツールを走ってるっていうのは普通の事だけど、90年代の前半まではロードレーサーと言えばヨーロッパのもの。アメリカンロードなんて。というのが常識だった。

小笠原ー 今はランプレに吸収されてなくなっちゃいましたけど、サエコチームでキャノンデールが参戦したのが96年のこと。あれは、ヨーロッパの自転車界にとっては黒船襲来以上の出来事だった。


難波ー ユーザーにとってももの凄い衝撃だったようで、それまでアメリカ東海岸のマウンテンバイクの強豪ブランドだったキャノンデールが一気に「ヨーロッパで成功したブランド」になった。なので、旧リクイガスの活躍もあってドイツ、イタリアではキャノンデールはもの凄い人気。余りにブランドが多過ぎて、トレック、スペシャライズドですらその存在を十分にアピール出来ていない世界第2のマーケット、ドイツでもキャノンデールと言えばレースに強い高級ブランドとして完全に定着している。

小笠原ー なので、いわゆる「本場」欧州でロードレーサーっちゃ。というカタチは崩せないし崩そうとも思っていないという所がデザインから見て取れる。そうですよとはキャノンデールは言わないんだけど、並べてみると一目瞭然。

難波ー 古典主義とは言わないけどネオクラシック。少なくともロードレーサーのデザインに於いては改革派ではない。ヨーロッパに打って出なかったアルミの最初の頃はアルミメガチューブ御三家(Cannondale、KLEIN、GT)と呼ばれる超革新派だったのにヨーロッパに来た瞬間に180°方向転換。本家本流とは。を考えるようになった。

小笠原ー 昔からのロードのユーザーはそれをカッコイイと思っているし、デザイン的には成功していると思う。マウンテンバイクでの歴史上の変態デザインを知っていると、同じブランドかと思ってしまう程にステディ。もの凄いキャノンデールを見せてくれとは思いつつも、この格好良さは捨てて欲しくない。

難波ー インプレを語る前に、前置きが長くなり過ぎたけど、SUPERSIX EVOの裏にはそういう話があるって言う事は言っておきたい。ついでに、お蔵入りになっていた写真をギャラリーにしておくのでキャノンデールファンの人は楽しんでほしい。

Vol.5に続く


 
 

talk:Kenji Nanba,小笠原崇裕
photo:Kenji Nanba,The Bike Journal
date:13.3.07