LEXUS F SPORTロードバイクをテスト

発売されたばかりの新型LEXUS ISが並んで写真が綺麗にまとまっているため、これは記事広告なんではないか。と誤解する読者諸兄も居られると思うので誤解のないように先に言っておくとTHE BIKE JOURNALは非自転車広告プラットフォームなので、この記事は広告ではない。なのでLEXUSから1ドル(円?)たりとも貰っていないため、純粋な取材に基づいた印象を述べるのみである。
なんでこんな事を書いたのかというと、LEXUSロードバイクとあって普段お読みでない方も読むであろうから、この点だけは先に解った上で読んで頂かないと作っている側としても面白くないと思ったからというのがその理由。

どうやら自動車メディア向けのISの試乗会にLEXUS F SPORT ROADBIKEが試乗出来る形で展示されるらしいという情報をキャッチして、本来は自転車メディア向けの試乗枠は用意されていなかった所に、LEXUS内部の人脈を使って無理矢理捩じ込んで頂き、F SPORT ROADBIKEに試乗する機会を得るに至ったというのが今回の事の始まりである。なので、他のメディアには試乗の話が出ていないのに私達だけが先駆けて試乗しているという事になっている。

今回の試乗は上記のように、無理矢理捩じ込んで頂いたのだが、自転車ジャーナリズムとして考えると狙いは、明らかにOEM生産で作ったと思われるフレームに9070Di2を組み込んで売ってみても、餅は餅屋であるので、TREKやSPECIALIZED、CANNONDALEのようなガチガチスポーツサイクル専業ブランドの領域に踏み込んで行って、「LEXUSスゲェ。感動した。」と言えるような自転車が作れる訳がありませんよ。

コッチだって、自転車が好きでたまらないロケットエンジニアやレーシングカーエンジニアが転職して来て、寝る間も惜しんでワークステーションでFEM解析をやって作ったカーボンフレームに100年かけて煮詰めて来たジオメトリーだの世界中のフィールドで煮詰めて来た感性的な乗り味だのを詰め込んで商品として売ってる訳ですから。と言いに来た。つもりだった。

が、昼に試乗して、開発やマーケティングの経緯を聞いて、今、モニターに向かって原稿を打っていると、結論は「LEXUSスゲェ。」なんである。嘘ではなく誠。世界最大の自動車メーカーの本気って言うのはそのくらい凄いのだ。いつも以上に前置きが長いが、最後まで読んで頂くと必ず「スゲェ」の理由が解るのでお付き合い頂きたい。

熱心な自転車フリークの皆さんには、なんでLEXUSがロードバイクなのか、今なのか、しかもなんで100万円なのかについて話しておく必要があるだろう。

言わずもがな、LEXUSはプレミアム自動車ブランドであって自転車ブランドではないので、このF SPORT ROADBIKEの発売自体はいわゆるマーケティング活動の一環だ。LEXUSブランドをプレミアムなライフスタイルブランドにするためのひとつのツールとしてロードバイクを発売した。

要するに、ロードバイクに乗りそうな層(知っての通り国内での中心人口は35歳から45歳の男性で大都市に居住)にLEXUSに振り向いてもらって、「お、LEXUSってカッコいいじゃん」と思ってもらえれば、マーケティング上の勝負は勝ちである。ちなみにいうと、この6月にはLEXUSライフスタイルマガジンBEYOND by LEXUSという猛烈にクリエイティブ力の強い雑誌まで創刊した。要するにLEXUSのライフスタイルブランド化に本気なのである。

それが、なんで今なのか。左のクルマ。新型ISの導入があったからだ。価格は2.5リッターV6を搭載したIS250の420万円からで、中心は480万円のハイブリッドモデルIS 300h。さっきの、「35歳から45歳の大都市に居住してそうで、ライフスタイルを持っていそうな男性がターゲット」で、さらにISではハイブリッドモデルを新規に導入して、それが売り上げの8割を占めるのだからエコにも興味があるだろう。ぐらいの辺りから緻密にマーケティングされてロードバイクの導入へと結びつく。

なので、この記事を読んでいるあなたが上記の層にバッチリとハマっていて新型ISを見た事がなかったのに、ロードバイクに並んだISを見て「あれ?LEXUS IS、カッコいいじゃん。」と今、思っているとしたら、LEXUSマーケティング部はやはり相当に優秀だと言う事である。LEXUSロードバイクの本質的な使命は、そう思わせる機会を創出すると言う事にあるのだから。

The Bike Journalの読者の70%は東京都市圏に居住しており92%は男性で35-45歳が中心(Google解析、Facebookのファン層調べ)なので、ターゲット直球ストレート。ちなみに旧型ISはリアシートが折り畳めなかったので自転車が積みにくかったが、新型はハイブリッドでもシートが倒れるのでロードバイクで2名乗車2台積載は前輪を外すだけで余裕である。

かつての日本の高級セダンとクーペは、トランクに8.5インチのゴルフバッグが何本入るか(欧米にはゴルフに乗り合って行くという習慣が余りないのでそれは求められなかったため、日本車独自の文化として育った)が重大な評価基準であったが、遂に、自転車が何台入るかの意味を自動車メーカー側が無視出来なくなったとも考えられるので、とりあえずサイクリストはこのLEXUSバイクについて喜んで良い。むしろ喜ぶべきだ。

このLEXUSロードバイクプロジェクトを統括したLEXUS企画部の渡邉直樹さんによれば、プロジェクトが立ち上がったのは1年程前で、ISの発表と同時にロードバイクを発表というのは、上記の話があるので会社的に決められたデッドラインであった。

自動車やモーターショーに詳しい読者なら09年の東京モーターショーでLEXUSが初のスーパーカーLFA(写真上)を発表したタイミングで、小径の電動アシストロードバイク(写真下)を発表した事を記憶の片隅に覚えているかもしれない。

このタイミングで自転車が発表される事は噂話で聞いていたが、てっきりあの小径ロードバイクが市販化されるのだとばかり思っていたら、直球真剣勝負のオーソドックスなロードバイクが出て来て驚いた。個人的にはあの小径車は好きだったのだが、渡邉さん曰く、「あのバイクは、多くの自転車ユーザーの琴線に触れなかったので注目が集められず企画としては失敗だった。」との事だ。

つまりマーケティング上の理由が大きな理由なので、注目が集められない自転車は意味がないのである。それは自転車ブランドだって、どんなにマニアックでも売れなかったら失敗作な訳で、使命がある以上果たすのが仕事である。ここからの話が、面白いので長文になるが最後まで読んで欲しい。
 
 

Vol.2に続く

report:Kenji Nanba
photo:The Bike Journal, Kenji Nanba
date:13.6.13