LEXUS F SPORTロードバイクを国内最速試乗Vol.2

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このプロジェクトを進めて行くに当たって、当初計画されたのはやはりOEMでバイクを作って、我々が言う所の中級価格帯(それでも世間一般では超のつく高級自転車である)、つまりカーボンフレームにアルテグラぐらいを発売すると計画したそうだ。

一般的な話をするとロードバイクのヒエラルキー的値段は自動車の10分の1ぐらい。1200万円のポルシェ911感覚のロードバイクが約120万円のTREKで言えばマドン7、120万円の軽自動車感覚のロードバイクが同じくTREKで言えば10万円程のアルミの1.2感覚なので、400-500万円ぐらいのLEXUS IS感覚のロードバイクと言えば40万円ぐらいのカーボンフレームにアルテグラのバイク。最初に考えた計画は、確かに間違っていない。でも、その計画にトヨタ自動車の上層部からダメ出しが出た。上層部とは、こだわりの人で有名なトヨタ自動車の豊田章男社長ご本人である。

豊田社長の意見では「LEXUSが自転車を作るのならば、既存の自転車マニアが、アッと驚いて一目置くぐらいのバイクを作らねばならない。」とのこと。こうして、ロードバイクの想定定価が40万円程度から、主要ブランドがフラッグシップで主戦場とする100万円へと一気に跳ね上がった。

ではどうやって、マニアがあっと驚くようなバイクを作るのか?幸いにしてLEXUSには資産があった。LFAの生産設備である。The Bike Journalの読者ならご存知だと思うが、カーボンファイバーフレームの作り方には大きく別けて2種類があって、簡単に説明するとTREKやSPECIALIZEDなど大半のブランドが採用している繊維メーカーから供給されたカーボンファイバーシートを重ねてエポキシを塗って圧力と熱を加えて成型するいわゆるカーボンプリプレグ方式と、TIMEやBMCの一部のモデルが採用している、カーボンファイバーの糸からチューブを編んでレジンを加えて成型するRTM方式(レジン・トランスファー・モールド)である。

LEXUS LFAのシャシーはプリプレグ方式で作られており、フロントウィンドーの周りのAピラーなどはRTMで作られている。要するに設備は既にある。勿論、そこには自転車ブランドが尻尾を巻いて逃げ出してしまう程のFEM解析が可能なスーパーコンピューターが開発センターにはあるし、テストコースから、風洞実験設備だってなんだってある。LEXUSが本気を出せば、自転車メーカーが100年掛かって作って来たスポーツバイクを赤子の手をひねる如くやっつけられるバイクが作れてしまう。と、思いきや、答えはそうではなかった。

このプロジェクトが動き始めて、自動車の部品調達筋人脈を経由して、LFAのカーボンエンジニアが台湾のカーボンフレーム生産工場へと視察に行ったようだ。その結論は「1年以内でこの値段じゃ無理。」

この出来事を自転車マニアは両手を上げて喜んでいい。世界最大の自動車メーカーのフラッグシップスーパーカーのエンジニアが、スポーツバイクの開発と生産現場を見て、カーボンスポーツバイク作りは、「マトモ」な上に「手間が掛かっている」と認めたのである。なので、F SPORT ROADBIKEはLEXUSが目指すバイクの乗り味を持ったフレームをOEM生産で調達する事が決まった。

そして日本のブランドのバイクであるのでコンポーネントはSHIMANO DURA-ACE Di2。じゃあ、OEMで調達したフレームにシマノのコンポを組み付けて、それの何がLEXUSなのか。本当にマーケティングドリブンの良くある自動車ブランドの自転車じゃないかと言う事になる。ところが、ここからが「LEXUS、スゲェ」の部分なのである。
 
 

Vol.3に続く

report:Kenji Nanba
photo:The Bike Journal, Kenji Nanba
date:13.6.13