LEXUS F SPORTロードバイクを国内最速試乗Vol.3

Vol.1、2をまだご覧でない方は、コチラからご覧ください。

まず届いたフレームを触った時点で塗装の匠がこう言ったらしい。「こんなもの、LEXUSディーラーに納車出来る訳がない」手で触れただけでミクロン単位の塗装のデコボコを感じられる匠から言わせると、確かに自転車の塗装は誉められたものではないだろう。

自動車の塗装と言うのは、塵ひとつ許されない空気圧管理されたクリーンルームの中をボディパネルが流れて来て、ボディのCADデータに従って吹き付け量がインプットされた塗装ロボットによって完全自動で行われる。3重4重に埃をシャットアウトしてもボディに埃がついて塗装の下に入ってしまうと、完成検査でそのホワイトボディは修理ラインへ送られるというのが常であるが、自転車の場合は残念ながら塗装に関しては足元にも及んでいない。

ギリギリ足元に及べているメーカーもあるが、それでも2重隔壁とエアカーテンでシャットアウトした塗装ブースの壁に滝を作って埃を吸着しながらスプレーガンで職人が塗っているというレベルで、ロボット塗装は見た事がない。

そんな訳で、まずフレーム1本あたり1日程の時間を使って塗装の匠が塗装を補修。そしてクリアの表面研磨を行ったらしい。

次にヘッドチューブのエンブレム貼りだが、これが面白い。超大企業なのでエンブレムはブランドの中核を決める超重要項目である。なので、当然そこの責任を取るのはLEXUSデザイン本部。匠がデザイン本部から指示されたヘッドチューブの装着位置は、ヘッドチューブ上端から14mm。ではなく、なんと14.57mm。0.01mmに何の意味があるのか、一般人がそれを見て「んーロゴの位置が0.01mm上だったらしっくりくるんだけどなぁ」となる筈もないが、LEXUSデザイン本部には外せない0.57mmの指示、これに従うためにLFA工房では、フレームを固定する専用治具をつくってレーザー照射機を用いてエンブレムを0.01mm単位で調整して装着したという。

そのコストはエンブレムの製造原価だけで、ちょっとここには書けないが、普及価格帯のカーボンフレームの工場出荷価格を上回っている事は事実だ。無印の自転車フレームがLEXUSのフレームになる瞬間には、それ相応の手間とコストが掛かっているのである。

更に匠が気になったのは、一般的なプロショップに置いてある自転車のホイールとハンドルのアライメントの出てなさ。1°、2°は当たり前に狂っているこの状態は彼らの常識では「あり得ない」状態らしい。確かに、自動車でホイールアライメントが1°狂っていたら確実にディーラーに返品である。

そんなものは工場出荷時にいくら合わせて出荷しても、ユーザーが自分のポジションを出すのに一度ステムを外したら全く意味がないのではないか?と思うかもしれないが、匠に言わせれば「そう言う問題ではない」。「LEXUSの工場から出荷される製品は、その時点で完璧でなければならない」らしい。

と言う事で、レーシングカーと同じ精度が出せるレーザー照射機と治具を100台のバイクのために新規に設計して、組み付け精度を向上。更に、各部の部品の締め付けトルクや規定グリス量について、網羅したA4 10ページに及ぶアッセンブルマニュアルを作って、組み付ける匠によって精度の違いが出ないようにしたという。自転車なので10ページで済むが、LFAの場合はこれはA4 1000ページを超えるという。

もちろんシリアルナンバーでアッセンブルを担当した匠が追跡可能な仕組みとなっており、トラブル発生の際の原因追跡が出来る仕組みも自動車と同じだ。

とこうした話を聞いて、バイクを眺めると確かにロゴの配置は、自転車の常識の置き場所とは違うがデザイン的に考え抜かれた配置であるし、塗装の表面仕上げは自転車のクオリティを凌駕しすぎている。

パーツアッセンブルが・・・という話はあるが、これは走りの性能を突き詰めて考えるとLEXUSの狙い所の走行性能のためには、こうなったとの事である。乗ってみたら、確かになるほどねとは思えた。アッセンブルの格好良し悪しについてはもう少しやり方があったのは事実だろう。

このパーツアッセンブルで完成車100万円となると、フレームの価格は40万円から45万円であるが、走行性能については私より長時間を乗った小笠原氏が詳しく語るとして、フレーム規格やスペック、乗り味から来る上質感という意味では同じ値段帯のアメリカンブランドのフラッグシップロードの域には達していない。ただし、上記の手間隙の話を聞くと、100台限定でこの値段で抑えて来たというのは、むしろ安いんではないか?と思えなくもない。その手間が掛かっているから、自転車が速くなるのかと言われるとまったく速くはならないし軽くもならないけど、プレミアムにはなる。LEXUSはプレミアムブランドなのだ。とはいえ、「LEXUSスゲェ」の本質は0.01mmではない、ではそれは一体なんなのだろうか。
 
 

Vol.4に続く

report:Kenji Nanba
photo:The Bike Journal, Kenji Nanba
date:13.6.16