S-Works EVADEを試す

春先から、しれっとSpecializedサポートの欧州プロ選手が使っていてジワジワと話題になっていた新型エアロヘルメットがS-Works EVADEという名前を受けて市場に投入された。ちなみにイヴェードと読む。

ご存知と思うがエアロヘルメット界では近年テール部分のショート化が進んでおり、ヘルメット界の盟主であるGIROもエアーアタックというショートテールエアロヘルメット(以下ショートテール)を昨年投入した。

横風でも空気抵抗にならず、ライダーのポジションによる空力の悪化も最低限に防げるショートテールのEVADEは、Specializedの空力エンジニアに言わせれば「TT2ヘルメットと比べて風洞実験室の成績で真正面からの一定した風で同レベルの空力。様々なコンディションとライダーの姿勢が想定される現実の世界ではこちらの方が明らかに空力に優れる。ヘルメット内のエアフローの快適さは比べ物にならない。」との事。

最初に風を受けて乱気流を発生する人間の頭部は自転車自体のエアロ化と同じくらい重要なのは、ロングディスタンスのトライアスロンで10時間を切るようなタイムの選手の使用率を見れば誰でも解るだろう。あのように不快なヘルメットを炎天下の中で5時間に渡って被り続けてでもタイムを稼ぎたい訳で、結果が出るからこそ我慢して皆が被っている。被った事のない人のために言っておくと、実際の体感値ではディープリムホイールのハイトを10mmから15mm程度上げたぐらいの効果が得られる。

本題のイヴェードであるが、今回テストしたのは2つ用意されるフィット、国際標準フィットとアジアンフィットのうち国際標準の方なので被り心地については適正な評価とはならないが、国際標準の方と前置きをした上で言うと、まあOK。少なくとも自分にとっては痛くはないし普通に被っていられる一方で、他の良く出来たロードヘルメットのような包み込まれる快適さと言う意味では一歩及ばないがこれについての結論はアジアンフィットの生産開始を待ちたい。ちなみに、重量はMサイズで283gのため決して軽くはないが一昔前のヘルメットを知っている身からすれば、これもまあエアロヘルメットなのでOK。

リアの大きな開口部がフロントのベンチレーターから入った空気を引っ張って、空気を乱さずに排気するというご自慢のベンチレーション性能は、日本の高温多湿の真夏に使うと超絶快適とは言えないが通常のロングテールのエアロメットに比べるとやはり比べ物にならない程に快適。

空力については、通常タイプのS-Works PREVAILと同じ条件で試したが、結果はSpecializedの言う通りで、時速30km程度の時点でイヴェードは明らかに後頭部の左右が安定して空気を流している感じが感じ取られ、耳に伝わって来るノイズも静か。40km/h近くなると、出力面でもギアが1T違うぐらい、53×15Tで踏んでいるのが16Tを踏んでいるようなペダリングの軽さを感じられた。下りで60km/hを超えるような条件では、その効果が圧倒的なのは間違いない。要するにロングテールのTTヘルメットと同じぐらいのエアロ効果が明らかにある。

同じショートテールのエアロヘルメットと言えば、GIROのエアーアタックも気になっている人が多いだろう。どっちがどっち?と言われると、35km/hぐらいで走った時のエアフローはエアーアタックの方が良い。一方で、エアーアタックは額の下側から空気を入れる仕組みのために自慢のバイザーを着けるとコンタクトレンズ装着者には堪え難い。空力性能に関しては、体感値では殆ど変わらず、色々なコンディションを平均するとどちらも同じぐらいの性能を発揮するだろう。ヒルクライム時の頭内の蒸し具合では、一応通気孔が付いているイヴェードの方が明らかに上だが、それを求めるならそもそも普通のヘルメットを被った方が良い。

デザイン面では担当デザイナーに聞くと、McLarenとの共同デザインではなくSpecializedの単独での開発だそうだ。インスピレーションを受けたのはレーシングカー、ジェット機、パワーボートなどスピードの出るものすべて。リアの排気口の形状がMcLarenの新型スーパーカーP1に似ていませんか?と聞くと、スピードの出る物は最終的に時代時代でジャンルが違っても似たような形状に行き着く。と笑いながら答えていた。

で、結論として全員が全員イヴェードを買うべきなのか?と聞かれると答えはノー。やはり、このヘルメットで日本の標高が低いエリアの峠を登るとかなり蒸すのは間違いないだろう。その辺りもSpecializedは解っているようでアメリカの商品企画担当者から渡された資料には、Evadeは「フラットでウィンディーなコンディションに」、Prevailは「暑くて、アップダウンのある日に」と書いてあった。まさに、その通り。関東の10月ぐらいの気候なら毎日被っても良いだろうが真夏はお勧めしない。一方で、平坦ぎみのロードレースやサーキットロードでは平均速度がそもそも高いので快適なエアフローを得る事が出来るだろう。また、トライアスリートは迷う事無くショートもロングも全員購入で良い。
どちらにしても、これの購入を考えるような人は通常の最高級グレードのヘルメットも持っているだろうから、2つ持っておいて、その日のコンディションと気分でどちらにするか考える。という使い方が理想的だ。

ちなみに、アジアンフィットモデルの量産はまだ始まっておらず、日本への導入は恐らく秋頃になるので、昨年のS-Worksシューズの例宜しく初期ロットを手に入れるためには、Specializedのヘルメットならどれを被ってもフィッティングは大丈夫という人は早めに予約しておいて損はない。
 
 

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report:Kenji Nanba
photo:The Bike Journal
date:13.7.13