年に一度のMTB日本最速を決める全日本MTB選手権が去る7月15−17日に開催された。MTB DH(ダウンヒル)とXC(クロスカントリー)の2種類の競技が行われたが、まずクロスカントリーの行方から紹介する。

例年通り長野県の富士見パノラマにて開催された本大会、注目はやはり前人未到の4連覇が掛かる山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)に同じチームメイトの辻浦圭一、平野星矢の2名、全日本直前に開催された北海道のJシリーズで優勝している小野寺健(スペシャライズド)、また、山本和弘(キャノンデール)、武井京介(チーム・フォルツァ)、松本駿(トレック)、門田基志(ジャイアント)、斉藤亮(コラテック)らがどこまで勝負を挑めるかが見所であった。
レースはUCIルールに則ってつくられた一周4.0kmのコースを7周回で争う。富士見パノラマのXCコースと知っている人の為に説明しておくと、基本的には従来のコースとほぼ同様だが、ごく僅かな変更が加えられたコース。30℃を超える気温の中、午後1時にレースはスタートとなった。
スタート直後から、いつもなら飛び出して行く走りを得意とする山本幸平の走りに異変が感じられた。標高差50m程度の最初の登りを後続を振り切って走る筈の山本が、下りのシングルトラックを出て来た時点で小野寺に先行されている。「全日本の為に水曜日にアメリカから戻って来たばかりで体調は万全とは言えない。むしろ悪い」と語る山本のレース展開に黄色信号が点滅した瞬間だった。
1周が終わってトップで帰って来たのは、平野。下馬評では山本が体調不良で勝てない走りをした時の最有力候補は平野と囁かれていただけに評判通りの走りと言える。表情は相当集中出来ている。続いて山本、少し離れて武井、小野寺、斉藤の3人が続く。
1周半、2周と時間が経過するごとに山本の表情が明らかにきつそうだ。3位争いからは小野寺がチェーントラブル、斉藤も下がって武井が一気に前との差を詰めて来た。
レースが動いたのは4周目。レース後に「風が出て少し気温が下がった辺りで体調が戻って来た」と語った通り、4周目に平野を山本が捉えた。もう、この時点で3位の武井との差は2分以上。勝負の行方がほぼ、平野と山本に絞られた。
5周目に入ると、平野を完全に置き去りにした山本の走りが見れた。テクニカルなシングルトラックをモノともしない余裕の走り、本来の山本の走りだ。勝負ありの瞬間である。3位争いも、一時相当遅れていた小野寺が戻って来て武井を引き離している。
レースはそのまま山本が平野との差を広げたままキープして、42秒差でゴール。

レース後の各選手のコメントは以下の通り

山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)
体調は万全ではなかったが、今年は転戦を重ねる環境にも慣れており精神状態は去年程悪くない。
1周目から飛び出して行きたかったが、最初の登りで小野寺に先に行かれた所から解るように体調は明らかに良くないので
オーバーペースにならないように走った。あまりの暑さ辛かったが、4周目で平野を捉えると、
気温も少し下がって来て体調が良かったので引き離した。楽勝ではないが、昨年よりは辛くはなかった。
4連覇出来たのでとりあえず嬉しい。
来週は1週間北海道に帰って、そのあとロンドンのプレオリンピックレース、フランスシリーズ、ワールドカップのヨーロッパラウンドを経て
世界選手権に望みたい。世界選手権代表3人の成績次第で、オリンピック枠がもう一つ見えてくるので気を抜かずに頑張りたい。

平野星矢(チームブリヂストン・アンカー)
最初の4周は、先頭パック、それから先頭で周回を重ねていて、幸平の調子が明らかに良く無さそうだったので、正直言って勝ちが見えた。しかし、2周目は昨年とフィードの位置が変わっていて補給を取り損ねた。3周目は集中しすぎていてやはり補給出来ず、4周目でなんとか補給を受け取ったものの、全部補給する間もなくシングルトラックでボトルが落ちてしまった。オフィシャルのフィードで水だけ補給したものの、結果として、そうしたミスが重なって幸平に捉えられた後は、圧力に屈して勝利を逃してしまった。2位の結果は上出来だと思うが、勝てたかもしれないので残念。また来年ですね。今後は、欧州レースを転戦して、世界選手権に望みたい。

小野寺健(スペシャライズド)
1周目は1位で通過。体調は、この前のニセコラウンドまでは絶好調だったが、その後、調整に失敗して万全とは言えない状況だった。途中でチェーンが落ちたりして、一度7位にまで落ちたが、それから自分のペースで淡々と追い上げた。4周目に3位の武井に追いついたが、武井氏が辛そうだったので、シングルトラックの登りで前に出て、シングルトラックの下りで一気に勝負に出た。登り返しで武井が大きく離れたのでそのまま自分のペースで走った。3位に入れた結果は、体調を考えると悪くない。世界選では本来の走りを見せたい。

武井京介(チームフォルツァ)
震災の後は精神的にもかなり参っていたので、練習がマトモに出来ておらず、レースの本数もこなせていない。今日は幸平の体調が悪そうだったので、ひょっとしたら勝ちも狙えるかと思い中盤頑張ってみたが1時間を超えた所で、やはり高い出力の維持に体が着いて行かず全身をツッてしまった。気温の関係もあるだろう。そのタイミングで小野寺に一気に行かれてしまい、3分近く離れていた山本和弘にも抜かれてしまった。この後、調子を上げて、欧州のワールドカップラウンドにチャレンジして、チームジャパンとして2枠目の五輪代表枠を取りに行きたい。

女子のレースは、先日のアジア大陸選手権後、慢性疲労が伝えられる片山梨絵(スペシャライズド)に対して、中込由香里(シーナック・スペシャライズド)、矢沢みつみがどこまで迫れるかが注目を集めたが、序盤から後続を引き離した片山がほぼ一定の間隔を保って全日本選手権8連覇となった。


DHでは、青木卓也(ジャイアント)、出川直樹(Devinci/SUNSPI)の優勝が予想されていたが、大きく予想を覆す形で19歳の新星、清水一輝(AKI FACTORY TEAM)が2位の出川に0.988秒の差をつけて優勝。女子は、肩の腱板損傷の疑いがある程の怪我をおして12連覇に挑んだ末政実緒が優勝した。