メイドインジャパンの情熱。MIYATA JAPONストーリー Vol.2

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1981年のツール・ド・フランス、第17ステージのゴール地点であるラルプデュエズをカプリゾーネKOGA-MIYATAのエース、ピーター・ビネンがミヤタのスチールフレームに乗って制した。

そのバイクにも採用された秘伝のダブルスパイラルチューブを採用した究極のスチールバイク、THE MIYATAが戻ってきた。最初に聞いたときは私自身も「ふーん」と思ったのを覚えているが、何かの展示会で新生THE MIYATAの実物を見たときに鳥肌が立った。

スチールのフレーム作りや塗装プロセスを少しカジっている人なら解るであろう細部へのこだわり具合が常軌を逸しているのである。しかも聞けば、茅ヶ崎の本社工場にある工房で手作り。ということは、頼めばその作られている行程を日帰りで見学に行けるという事でもある。(注:一般公開はされていません。)

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その裏側を見てみたいと取材を申し込んでみたら快諾されたので、茅ヶ崎の宮田工業本社工場へと伺ってみた。かつては、世界中の主要ブランドのOEMフレームを生産していた茅ヶ崎工場は現在は宮田工業の主力事業である消火器の工場となっている(現在は自転車事業部はミヤタサイクルとして独立した会社となっている)が、その工場の一角にこじんまりとしたミヤタ工房が拠を構えている。

ちょうどその日は、金属チューブをフレームサイズに合わせて削っていくザグリという行程の日で、職人さんが切削機械で作業していた。

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黙々とチューブを削っては治具に置いて合わせ、また削ってという作業を繰り返す職人さんが、しばらくすると作業が一段落したところで口を開いた。

「フレーム作りは、40年ぐらいになりますかね?入社してから定年まで殆どフレーム製造一筋でやってきましたから。ミヤタを定年で辞めた後は、友人の会社で機械部品を作る仕事をしていたんですが、THE MIYATAのプロジェクトを立ち上げるって言うんでね、折角なら人生最後の仕事は自分の満足いくまで作り込んだフレームを作りたいと思って戻ってきたんです。」

昔気質の職人さんは、職人は名前や顔を出す仕事じゃなくて、作った作品を見て乗って貰ってお客さんに感じて貰った事だけがすべてだから手元以外の姿は映さないで欲しいとおっしゃる。まさに職人気質。

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「THE MIYATAをもう一回作るって言われたときにね、昔使ってたフレーム治具、それからダブルスパイラルチューブが無いなら戻ってこないって言ったんですよ。」

ダブルスパイラルスプラインチューブこそがミヤタのフレームを世界に知らしめた究極のスチールチューブだ。かつて、自転車のフレーム強度がそれほど強くなかった時代は、パリ・ルーベなどのクラシックレースではチューブが折れるのは日常茶飯事で、ミヤタもCaplisone KOGA-MIYATA以外の様々なチームにフレームをOEMで供給していた(その中には、あのエディ・メルクスも含まれるらしい)が相当に苦労したという。

そんな中で、欧州のビルダーが、銃身の強度を高めるために使われてきた螺旋スプラインをチューブの内側に加える技術を生み出した。これにミヤタが伝承してきた銃製造のノウハウを活かして仕上げたのが、世界でただ一つの技術とされるヘッド側とシートチューブ側の両方からスパイラルを加えるダブルスパイラルスプラインチュービングだ。これにトリプルバテッド加工を加えたオリジナルチューブの事をミヤタではSSTB(スパイラル・スプライン・トリプル・バテッド)と呼んでいる。

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今から遠い昔の60年代や70年代、日本の自転車製造が世界を席巻した時代にはこうした職人の技術が花開いた時代であったと言われる。

「金属フレーム製造を一般の人が語るときには、すぐに溶接の技術が、ロウ付けの美しさがっていう話になるんですが、溶接っていうのはフレーム作りの最後の最後の30分の話でね、しかもある程度以上の職人が溶接すれば溶接自体はちゃんと仕上がるんですよ。

でもその前のザグリや芯出しが出来てなかったら、どんなに美しく溶接してもちゃんとしたフレームには仕上がりません。削って、治具に合わせて、また削って。そして徹底的に芯出しをする。そこに職人の技術やノウハウが生きてくるんですが、そのために昔使ってた治具がそのまま残ってないんじゃミヤタには戻れないって言ったんです。寿司職人の包丁や大工の鉋みたいなものでしょうね。フレーム職人には自分の感覚が染み着いた治具が大事なんです。」

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vol.3に続く
 
MIYATA JAPONオフィシャルサイト
 
 

report:Kenji Nanba
photo:Miyata Cycle、Kenji Nanba
date:14.4.2