Lauf、アイスランドから始まるサスペンション革命

アイスランドの新興サスペンションフォークブランド、Lauf。最初の製品としてつい直近にリリースされたのがLauf トレイルレーサーだ。刮目せよ、この変態的ルックス。と言いたい所だが、単なる変態形状に留まらないサスペンション革命とも言うべきテクノロジーが隠されていた。
 
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難波賢二が語るLaufトレイルレーサー
 
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パッと観ただけでは、単なる変態サスペンション(笑)。終了。となってしまいそうだが、オスカー・ピストリウスの義足エンジニアが開発したと聞いたら、ちょっと見る目が変わって来るだろう。速過ぎてオリンピックに出る事を国際陸連(IAAF)から一時は禁じられたあの義足だ。

乗る前は、見た目が面白いので冗談でと思って乗ってみたら、これは凄いと驚いてエンジニアと話したら「実は、オスカーの・・」と話してくれたのがエンジニアで設立者のベネディクト・スクラソン氏。
 
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乗り味は空飛ぶ絨毯と形容するのがふさわしい。路面の細かいバンプ、アスファルトからの振動、ブロックノブのざらつき感、全てをミュートしてくれる。一般的な油圧サスペンションでは不可能なごく初期の作動感が驚く程にスムーズで、あらゆるバンプを吸収。ロックアウトは出来ないが、ロックアウトしたいとも思わないウルトラスムーズな乗り味。

トレイルに入ると、ストロークが60mmなので連続した大きなバンプでは絶対的なストロークと減衰力が足りず底突きは避けられないが、連続しない一発の大きな衝撃吸収は抜重と組み合わせる事で、プログレッシブレートのカーボンリーフが美しいとまで表現出来る衝撃吸収性能をみせる。

左右合わせて12枚のカーボンリーフスプリングこそがそのキモで、前述の義足のテクノロジーを応用して作られている。フォークの重量は990gで連続バンプの吸収能力と500g以上のアドバンテージをどう考えるかによるが、1、2年ぐらいの内に大手ブランドが純正採用に踏み切りそうな完成度の高さだと思った。なお、板バネだが単なるバネではないので立派に減衰能力を併せ持っている。
  
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また、義足に求められる捻れ剛性の強さを余す所なく発揮しているリーフスプリングは驚く程に捻れ剛性が高く、見た目の形状から想像されるような四方八方にフニャフニャな感じは一切ない。動くべき方向にのみしなやかで、要らない方向には完璧な剛性感。機械的なロックアウトは構造的に持たせられないが、全く必要性は感じない。

心配すべきは耐久性だが、ベネディクト氏によれば一般的な油圧フォークの耐久性のなさがこのフォークの開発に至った最初のアイデアのひとつだという。

世界最大の義足ブランド、オズールで様々な義足を開発していて気がついたのがカーボンブレードの持つ驚くべきフレキシビリティと耐久性で、一般的な義足ユーザーはひとつのカーボンブレードの義足を20年以上の年月に渡って365日使い続けるという。故に、Laufサスペンションもゼロメンテナンスで5年間以上の期間に渡って乗り続けても性能の劣化は起こらないという。人は見かけによらないがサスペンションも同じという事だろうか。

29erクロカンならこれでいいんじゃ。と思えるようなフォークが思いもよらない所から出て来た。現時点では日本にディストリビューターは存在せず、オフィシャルサイトからのダイレクト販売でのみ展開されるようだが、早々に世界各国に販売網を用意するとの事だ。29er用と近々650B用がラインナップされる。

小笠原崇裕が語るLaufトレイルレーサー
 
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奇抜なコンセプト&デザインで「まとも」に「レース」で「戦える」物ってのは記憶の中にはほとんど無くて、90年代の自由な設計が行えたフレームの中で数本あったかな??程度。今でもMTBの世界はUCIルールというものが及ばない部分が多いので比較的自由な物作りが行えている。その中にあってもこのLaufトレイルレーサーサスペンションの独自性は一目でわかるし、カーボンを自在に操られるようになった時代が生んだものだろうか。

構造は単なる板バネの部類に入るが、作りそのものは物凄く手が込んでいて、細かな仕上げの部分まで手を抜かずに綺麗に整っている。こういった細かな部分で手を抜いているのが見受けられると、奇抜な物ってのはどうしても「壊れそう」とか「危なそう」といった心理的なものが働いてしまう。
 
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担当者に話を聞くと、このトレイルレーサーはアメリカのスコット/ローターに所属のヘクター・リベロスがレース前に試してみたら気に入ってしまってそのままレースで使用してプロクラスで7位に入るという成績を収めてしまった。たまたま会場に本人が居たので聞いてみたら、ステマじゃなくて本当に気に入ったから乗ったらしい。この話を聞いた後のインプレッションだったので恐る恐る走り出すって事はなく、最初からトレイルでギャップをジャンプしていた。

一切の調整機能は無く、スタンダードかハードかのバネの硬さの違いの2種類があるのみ。体重68kgの私はスタンダードのモデルで丁度良かった。舗装路でのダンシングではややボビングがあってフワフワと落ち着かない、あまりにハンドルに加重したダンシングではロスが大きく感じるが、通常のサスペンションをサグを取って調整して、ロックせずに走るよりはかなりボビングは少ない。

トレイルでは細かな振動は本当に綺麗に打ち消してくれる。感覚的にはストロークをしている感じはなく、かなり太いタイヤを装着しているか、絨毯を敷いた上を走っているような走行感があり、非常にスムース。ダウンヒルパートでは大きなギャップを越える際にはストローク感が少ないので弾かれる事があるが、細かい振動を拾ってくれていて路面をジワっと押さえ付けているので逆に一気に滑って行く感じはなかった。
 
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剛性面はそんじょそこらのフォークよりもガッチリしていた。コーナーリング中にハンドルをコジったりハードブレーキングをしても腰砕けしたりアンダーが出てしまう事はほとんど無く、普通のフォークと変わらない。

大きいギャップが連続する長いダウンヒルではかなり厳しいかもしれないが、昨今のワールドカップのクロスカントリー程のコースならば十分に仕様の範疇に入ると思われる。日本では王滝なんかに使用すればかなりフラットな走行感が得られると思う、というのもこのフォークの重量は900グラム台だが、軽量フォークにありがちなバネ下重量が軽すぎてハンドリングがスッカスカという感覚は少なく、重量物が下側にあるから重量から想像するスカスカ感よりだいぶ安定しているので長いダウンヒルでも安心だろう。

昔からこういったリンク式(これはそもそもリンクと言うのか?)のサスペンションはたまに出てきて、AMPやハリーキャットや三浦恭資さんが使っていたCWS製?のとか、何とルックのもあり、定着はしないもののその存在感は折り紙つきだった。私は中学生の頃だったので雑誌で見ているだけの物だったが、やはり強烈な印象が残っている。この現代において最適な構造や設計というものはかなり決まってきているように感じるが、その中においてこのLaufトレイルレーサーのように古典的な手法だが最新の技術で作られる物ってのは本当に心を踊らされる。

Laufオフィシャルサイト
 
 

report:Kenji Nanba, Takahiro Ogasawara
photo:Kenji Nanba
date:14.5.1