XTR Di2完全試乗インプレッション

XTR Di2の詳細はこちらからご覧ください。

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今までのすべてのワイヤー式MTBコンポーネント開発者への尊敬と感謝をまず先に述べた上でドイツ・アルブシュタッドで試したXTR Di2の製品インプレッションをお届けしよう。

終了のお知らせである。すべてのクロスカントリー競技者が日本で予約が始まり次第すぐに発注した方が良い。そのくらいに歴史を塗り替えてしまった製品だ。多分、遠くない将来XTR Di2は油圧フロントフォークの以来の革命として歴史に記されると思う。掛け値無しにその衝撃度は7970 Dura-Ace Di2が登場した時の比ではない。

先の速報で紹介済みの前後ディレーラーをワンフィンガーで操作するシンクロナイズドシフトだが、筆者自身はその詳細を関係者から数ヶ月前に聞いて機構の詳細も説明を受けていた。

どんなに説明を受けてもそんな仕組みが必要なのか?普通に左手でフロントディレーラーを操作すれば良いんじゃないか?と懐疑的に思って来たが、与えられた30分程の試乗枠で走ってみた結論はもう左手は要らないの一言。

シンクロナイズドシフトが凄いというより、Di2だから出来るシフト予約操作がもの凄い。
 
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ちょっと長文になるが、実際の使用シーンを想像しながらインプレッションを読んで欲しい。例えばアウタートップで回りきる下りのストレートエンドが岩ゴロゴロのガレ場でそのまま鋭角タイトコーナリングの後に登り返しがあるようなシーン。

従来のワイヤー式ではガレ場に入ってバイクを抑えるので一杯で操作不能になる前に軽いギアに変速しておいてケイデンスを上げたままやり過ごしてコーナーに進入時は既にスピードは落ちておりそのままヒルクライムへという一連の流れとなるか、もしくは重いギアのままガレ場を踏んでハイスピードで突っ込むがガレたコーナーの途中では変速する余裕はないので立ち上がりで適切なギア比を取れず失速ということになる。レース中のコーナーで刺して刺されての勝負を繰り返す非常に頻繁に登場する場面だ。
 
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ところがシンクロナイズドシフトでは、トップでガレ場に踏み込んだまま突っ込みながら出口の想定車速に応じてバキバキバキバキ(レバー式のシフトスイッチは、操作力は軽いが実際に指にバキバキ感のあるフィードバックがある。指の関節をバキバキ鳴らすようなフィーリング。)とシフトダウンレバーを押して行くだけで、例えば4回押し込むとフロントリアを勝手に変速しておよそ12.5%(M9000リズムシフトのギア比)×8に相当する程度ギアが軽くなる。

その間にライダーはフロントの変速の事など何も意識する事なく行う作業は路面の状況を見ながらペダルを踏み込んで行くだけ。

Di2がフロントとリアを巧みに変速しているなどと言う事は、心拍が180を超えていたら多分気がつく余裕もなくコーナーの先のヒルクライムに突撃して行く事になるだろう。もちろんワイヤー式のライバルが突っ込みと立ち上がりで失速して居るのを振り返る事すらなく。

更に路面がガレていてレバー操作を行う余裕すらない時は、ブレーキを掛けながら親指で押し込んでホールドすれば9070Di2同様に一気変速で事前に設定してある変速動作(例えば一気にインナーローまでから5速変速、3速変速などe-tubeで自在に設定可能)が出来る。

このアドバンテージは果てしなく、一度でもクロスカントリーレースを走った事のある人なら読んで想像しただけでどんな事になってしまったかが解るだろう。
 
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フロントの変速節度は限りなくスムーズかつ確実で、本気でトルクを掛けたままヌヌヌっとシマノならではの滑らかさでシフトアップする。ただし変速スピード自体は初期設定では猛烈に速いという訳ではなくむしろパワフル。変速スピードは、やはり設定で変更出来るようだが今回は試していない。

リアが12.5%のステップで変速して行くリズムステップというギア比は、確かにペダリングのペースが掴みやすく快適。ディレーラーの作動はもちろん非常に安定しているが、変速性能単体ではワイヤー式でも何の不満もないので、Di2になったから劇的に良くなっている訳ではない。この点はDura-Ace同様。

ちなみに、Di2はリアディレーラーの後ろにモーターが装着されているためドロップアウトを軸にぶら下がった形状となっているディレーラーが下りでもその慣性的重量から暴れず、機械式よりも悪条件に強いという。

ディレーラーのモーター及びモーター内部のギアはXTR Di2に合わせた出力強化版が採用されているが、1充電での航続距離については平均的なレース走行で285kmを開発目標として市販までに煮詰めて行っている途中だと言う。

プロダクトマネージャー氏曰く、バイクの水没時や泥、草などに対しては入念過ぎるレベルの対策がなされており、その点に対しては心配する必要がないという。落車時のディレーラーの破損に対しても、例えば大きな入力がリアディレーラーに掛かった際は内部のクラッチが自動的に開放されてディレーラー自体が「脱臼」する仕組みになっているので、シマノは明言を避けているが恐らく機械式よりも落車に対しては強い。
 
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どんな条件でも柔軟に変速して行けるもののチェーンに対しての負荷が非常に大きくチェーンの寿命が短くなるのではないか?と感じたが、その点に関しては方向指定チェーンの採用とシフトの微妙なチューニングを行っており、発売までには対策される予定だと言う。

右レバーをフロントブレーキで使っているライダーは日本に多いと思うが、前述のようなシンクロナイズドシフトでの使用を考えると左にシフトレバーを装着してフルブレーキしながら左手でシフトしたいと考えるライダーも居るだろう。もちろんe-tubeで設定する事で左をリアに割り振る事も可能だそうだ。

なお、工場出荷の設定で左右にシフトレバーを装着した際は、シンクロナイズドシフト時でも左のレバーでフロントディレーラーをマニュアル操作する事は可能。状況に応じてアウターに上げたい時などは自由に操作出来る。ちなみに9070 Dura-Ace Di2のスイッチでXTR Di2を作動させる事も可能なので、サテライトスイッチをバーエンドに付けるなどの方法も考えられる。
 
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シフトモニターの装着位置は決して見やすいとは言えないが、落車時にモニターが物理的に破損してしまうとジャンクション機能を兼ねているためシステムが動かなくなってしまうので、この位置に落ち着いているのではないかと思われる。

本気のXCレーサー以外のライダーにとってのXTR Di2は変速操作の事を何も気にしなくて良くなるので楽になる。としか言いようがなく、予算に余裕があればこちらを選択しておけば間違い無しという結論になるが、本気のレーサー、つまり勝てるか勝てないかの争いをしているのならXTRとXTR Di2の価格差などは1レース分の遠征費の話だ。導入しない理由はどこにもないだろう。

結局の所クロスカントリーレースは、人と人、心が折れるか折れないかのぶつかり合いだ。タイトコーナーの立ち上がりでライバルが真似出来ない芸当を実現したXTRは完全に心が折れてしまう飛び道具の域である。
 
 

report:Kenji Nanba
photo:The Bike Journal
date:14.5.31