日本代表インタビュー特集 Vol.1 別府史之編

6年後に迫った東京五輪でチームジャパンが勝つために、何をするべきなのか?日の丸を背負って世界で戦うアスリートに聞くインタビュー特集。第1回はTREK FACTORY RACINGに所属する別府史之に聞いた。
 
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難波ー 今日は東京五輪の選手村が出来る東京・晴海に遙々フランスからお越し頂いてありがとうございます。東京五輪に向けて日本代表が何をするべきか?というインタビューなんですが、まずは別府選手の今シーズンの事を聞かせて下さい。

別府ー リオじゃないんですね。笑

難波ー リオじゃなくて、東京。でもその前に、今シーズンの事。ジロ、ドフィネを終えて新チームに移って最初のシーズンの前半戦だったわけですが総括してみるとどうだったでしょう?

別府ー もともとTREKスポンサーのチームに所属していました。ただ今年はファクトリーチームになって最初のシーズンというだけあって結果が求められています。チーム加入時から今シーズンの山場はジロと指示されていました。個人としては逃げを狙っていくチャンスがなかったのですが、チームメンバーとしての仕事は出来たと思っています。

難波ー 個人としてはやはりステージ優勝を狙っていきたかった?

別府ー そういう思いはあります。ただロードレースはチームスポーツですから、チームに対してどういう貢献が出来るかというのが自分に与えられた最大のオーダーです。

難波ー 平地もヒルクライムも走れる選手としてチーム筋からは評価されていると聞いています。

別府ー ジロではTREK FACTORY RACINGは総合を狙う選手、山岳ステージを狙う選手、スプリントを狙っていく選手とバリエーションに富んだラインナップでした。その全ての選手を消耗させずに良い位置で勝負所に持って行くために働くというのが自分の任務で、個人総合は目標としていたトップ10に入り、チームポイント賞では3位でした。監督・チームからは働きを評価して貰えたので良かったと思います。

難波ー 今シーズンのこれからは?

別府ー 週末に開催される全日本選手権ですね。チームから与えられたオーダーは「ナショナルチャンピン」。自分としてもロードレース・TTの両方で勝つために帰ってきたので、まずは勝つことに集中したいですね。

難波ー なにやらクリテリウム・ドフィネでプロトタイプのバイクに乗っていたみたいですが?

別府ー ごめんなさい。それについてはノーコメントで。
 
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難波ー では本題の東京五輪ですが、6年後にこの東京で開催されます。東京五輪で勝ちに行く。と考えたときに、ロードレースはチームスポーツなので、どんなに別府選手がこの先6年で成長しても他の国が5枚、6枚のタレントを持って攻めてきたら勝てるわけがありません。

ただ東京で五輪を開催するのではなく、勝つために何をするべきなのか?何をしなきゃいけないのかを、世界の最先端を知り、世界の中心で活躍しているアスリートとしての意見として語って貰えませんか?

別府ー 若手に強くなって貰わないと、はっきり言って勝ち目はないと思います。それも1人、2人じゃなくて、プロツアーで走っている選手が沢山居て、その中から選考するぐらいのレベルじゃないと、厳しい言い方ですが自転車競技にとって東京五輪はただ開催するだけになってしまうでしょうね。

難波ー 若手とはどのくらいの年齢層という意味で?

別府ー 今、高校生でジュニアで走っているぐらいの選手ですね。

東京五輪で日本チームが本当に勝ちたいのなら、本気で強化に取り組むのはリオが終わってからじゃどう考えても手遅れ。3年なんかあっという間ですからね。6年を残してる今がラストチャンスだと思った方がいい。

難波ー ではその若手を育てるために今やるべき事は?

別府ー やはりヨーロッパのプロチームへのなるべく早い時点での加入を目指して、若手自身が自分で考えて活動するべきでしょう。

最近の若い選手と話していると、「とりあえず大学行って、大学行きながら選手やって、いつかはプロになって」という考えを持っている選手を良く見かけるんですが、人生全体を考えるととりあえず大学に行っておくという選択肢はなくはないですが、競技人生を考えるとそういう逃げ道を残した甘い考えではヨーロッパでプロとして活躍するのは無理でしょう。

難波ー なるほど。

別府ー ヨーロッパで活躍したかったらU23のうちにプロになっておかないと基本的に無理だと思って挑んで欲しい。エリートに上がってからじゃ遅いんです。

日本の大学に行って、日本のチームで活躍してっていう自転車のプロもあるでしょうが、ヨーロッパでプロをやるっていうのはそういう緩いやり方、緩いって言ったら波風が立つかもしれませんが、それじゃ通用するわけがないんです。こっち(ヨーロッパ)には、日本のプロより速いアマチュア選手が山程居て、その中で若いうちに飛び抜けた選手だけがプロで活躍出来る。ヨーロッパでしか学べないロードレースの基本もたくさんあるんです。それは人から聞くということでなく、実際のレースを走ることでしか学べないこともあります。

難波ー 敢えて厳しい環境に自分を置いて、試すというか、強くなる必要があると言うことですね。

別府ー プロ生活を長くやってると見えてくるのは、単に出力があって強いだけじゃ全然ダメ。上手く頭で考えて、レースを組み立てて、チームメンバーともコミュニケーションを取って認められて、自分の居る環境を自分で作っていける能力がないとどんなに出力があっても生き残っていけない。生き残っていけなければプロで成績を出すことも出来る筈がない。それがプロの世界なんです。

五輪で勝つっていうのは夢物語で語るだけならそれで良いんですが、本当にそれを狙って行こうと思ったら、まず多くの選手がヨーロッパのプロの環境に居て、その知識とノウハウをすべて集約して一丸となって戦わないと無理。

難波ー 少なくとも日本国内を見ているだけでは勝てる訳ないと言うことですね。

別府ー 日本のトレーナーや代表関係者の努力も解りますし、良いところもありますけど、世界のトップレベルの国も見ていると残念ながらチーム全体として強豪各国と戦える環境に至っていない。

まだ6年あるんじゃなくて、6年しかないんです。ただ開催するだけじゃない東京五輪。そのために何をするべきかを選手・チーム関係者が真面目に考えるチャンスは今しかない。その危機感を持って全員が行動するべきだと思います。
 
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難波ー 若手の支援も考えないといけない?

別府ー 支援して緩い環境を作るんじゃなく、若手自身が自分で考えてヨーロッパで居場所を作り上げる努力をするべきでしょう。自転車に乗るだけじゃなく、言葉、そして様々な知識、政治力を早い時期に身につける必要があります。それでヨーロッパに挑戦してダメだったら、残念ながらそこまでの選手だったという事です。

全員がプロになれる訳がないですけど、活躍出来た選手も活躍出来なかった選手も、そうした努力で得られた経験は選手を終えた先の人生で大きく役に立つと信じています。

難波ー 別府選手自身が東京五輪に向けてやることは?

別府ー 走り続けて成績を出し続ける。若手には背中で語れる事も多いと思っています。

難波ー ありがとうございました。東京五輪、いや、その前にリオでの活躍を期待しています。
 
 

interview:Kenji Nanba
photo:The Bike Journal
date:14.6.29